厚生労働省の患者調査によると精神疾患を有する総患者数は、2002年の258万人から2017年の419万人へと15年間で1.6倍と増加しています。しかし、入院患者数と外来患者数に分けて見てみると、増加しているのは外来患者数であり、入院患者数は1割程度減少しています。このことは、精神科疾患が治療薬の普及や国が入院患者の地域移行を推し進める中で、「入院する病気」から「外来で治療可能な病気」に変わってきたことを表していると考えられます。一方で、精神障がいを持つ方々が安心して地域生活を送るためには、先ず地域における基盤が整備される必要があり、様態が不安定となった場合にはいつでも安心して受診できる医療機関が身近にあると共に生活の場や日常的な生活支援が包括的に提供されることが重要です。
弊法人では、「住吉病院」をはじめ、「訪問看護ステーションきらり」「サポートハウスとびら」「精神科薬物療法サポートセンター」「リカバリーセンターすみよし」を運営することにより、設立以来、精神障がいを持つ方々が地域の一員として、安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障がい福祉、住まい、社会参加(就労)等を提供し「精神障がいにも対応した地域包括ケアシステム」の実践に注力してまいりました。今後とも、職員一同、精神障がいを持つ方々への医療・福祉による支援はもとより、地域に根ざした各種活動についても積極的に取り組んでいく所存です。
公益財団法人 住吉偕成会 理事長 吉尾隆