アニマル-アシステッド・セラピー(AAT)

さる4月2日、住吉神社では久しぶりににぎやかな春季例大祭が執り行われました。

今年は神輿渡御によるお旅所祭もあり、神社の境内では、太鼓の演奏ほかいろいろな催しがありました。ご参拝の方々も多く集まられを、とりわけ子どもの声が聞かれたことはうれしいことでした。

私どもの病院ではアルコールや向精神薬の減量や断薬を目指す方向けのアプローチも手がけていますが、最近、動物に触れることのメンタルヘルス領域における癒しについて考える機会がありました。

動物とのかかわりがメンタルヘルスに良い影響を与えることは、歴史的にも共有されていることだそうで、医療者が治療の補助的役割として用いるものを Animal Assisted Therapy(AAT:介在療法)、動物とのふれあいを通じてQOLの向上を目的とするものをAnimal Assisted Activity(AAA:動物介在活動)に分類されているということです。

動物介在型心理療法を検討する研究は限られていますが、最近の論文としてGermain,SM:Animal-Assisted Psychotherapy: A Meta Analytic Review.2020
は動物介在精神療法(Animal-Assisted Psychotherapy:AAP)についてのメタ解析に出会いました。
https://www.indigotherapy.com.au/wp-ontent/uploads/2021/08/4d.Animal-Assisted-Psychotherapy.pdf

筆者は次の3つについて検討しました。
1.精神疾患に対するAAPTの効果について(研究1)
2.発達障害の特性を持つ人が、発達障害の特性も含め、自分自身に対するいらだちや精神的な葛藤が自分に向けて表現される症状「内在化障害」に対するAAPTの効果の検証(研究2)
3.トラウマを経験した人へのAAPTの効果の検討(研究 3)

研究2についてはシステマティックレビューが実施したそうです。
研究1の結果は、介入前と介入後の比較では、すべての障害、注意欠陥多動性障害、識字障害、トラウマ・PTSDについて大きい効果が得られ、自閉症については、前後比較で中程度の効果を確認したとありました。さらに、不安障害の治療では大きな、他のすべての障害、識字障害、自閉症、トラウマ/PTSDの対象者においては中等度の効果が、介入群と対象群を比較した際に認められたそうです。
研究2(内在化障害)のシステマティックレビューでは ほとんどの研究が、実験グループと実験グループの間に統計的な差はないと報告してます。メタ解析の結果は、有意な大きな効果がありました。研究3(対トラウマ)では、介入前後の比較分析で大きな効果量を、治療群対コントロール群の比較分析で中程度の効果量がありました。
以上から筆者は、精神障害の症状を軽減するための動物介在型心理療法プログラムの利用は暫定的に支持するものとしました。また、この分野では、一般的に研究の質が低く、質の高い研究が行われていない、と指摘しています。

Koukourikos,KらのBenefits of Animal Assisted Therapy in Mental Health.2019
http://internationaljournalofcaringsciences.org/docs/64_koukorikos_review_12_3.pdf
では、精神疾患の健康に対するAATの利点は、病気の陰性症状の発現を減らし、患者の個性のさまざまな分野でスキルを発展させ、さらに生活の質を向上させることに関連しているとしています。そして 治療プログラムを適切に実施するための前提条件は、参加者の健康、安全、福利を保護するための基本的な条件と原則を遵守することであるとし、AATを開発するために、治療パラメータの定義、医療専門家の適切な教育、その設計と実施のために特別に訓練された学際的なチームの調整された行動、および研究領域の拡大が条件であると結んでいます。

日本語ではあまり論文がヒットしませんが、いろいろの疾患についてもう少し調べてみたいと思います。