もうひとつの「心病む母が遺してくれたもの」
- 2014.01.29
- 日記
「本書は前作『心病む母が遺してくれたもの』では書けなかった、闇の部分を書いたものです。闇の部分にも光が見えてきた今だからこそ、書くことができた本です。」
から始まる、夏苅郁子先生の新刊が出ました。
夏苅郁子著「もうひとつの『心病む母が遺してくれたこと』」日本評論社
この本は、無差別殺人を犯した永山則夫死刑囚の精神鑑定をされた石川義博先生からの手紙がきっかけとなって書かれたそうです。
永山死刑囚は非常に困難な人生を送ってきた人で、貧困・虐待、きょうだいの精神障害が背景にあったそうです。家族の重みを改めて知る機会を持たれた夏苅先生は今まで、視界から避けてきたことに直面してみようとお母様のことを調べなおされました。お母様のこと、ご自身の家族史を辿る中で新しい発見があったそうです。苦しいことだけで会った記憶の中に、心を支えてくれる人々との出会いがあり、そのことがレジリエンスを育ててくれたのだと気づいたこともあり、人は人を治す力をもていることを書かれています。
同時に精神医療の施策と、その波間に踊らされてしまう病をお持ちのご本人、そして苦悩されるご家族について書かれています。精神科病院の持つ権力構造=ヒエラルキーを「カースト制度」として正面から指摘し、かつての精神科病院にあった「作業療法」という名の使役についてもずばりと告発しています。
夏苅先生は読者に問いかけています。
「家族」とは何なのだろうか?
「わが国の精神科医療はこのままでよいのだろうか?」
今はまだ苦悩の中にあったり、回復を信じることができなくなっていたり、希望を見失ってしまっている方にもこの本を読んでいただきたいと思いました。もちろん、「このままではいけない、何かを変えなくてはいけない」と思っている人々にもです。そしてこの本を読まれたさまざまな人々に、この本とご一緒に考えて頂きたいとも思います。
2月6日には山梨県精神障害者家族会連合会(しゃくなげ会)主催による夏苅先生の講演会が開催されます。
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
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