初発統合失調症者への維持治療に関する追跡研究

Harrow M and Jobe T:Dose Long-Term Treatment of Schizophrenia With Antipsychotic Medications Facilitate Recovery? Schizophrenia Bulletin 39(5);962-965,2013
に出会って読んでみました。筆者らの指摘のとおり、抗精神病薬の論文では、多数の短期(1~2年)間の研究における抗精神病薬の有効性が、長期抗精神病薬投与の根拠となっていますが、アメリカ精神医学会(APA)のガイドラインでは、特に初回エピソードの方について1年間以上、症状がみられない統合失調症の診断を持つ人には、抗精神病薬の投与を中止できるかどうかを検討することが提案されています。しかし一方で、世界精神医学会(WPA)の包括的レビューでは維持治療による予後改善が主張されています。

APAの統合失調症治療ガイドラインはこちらをご覧ください→http://psychiatryonline.org/content.aspx?bookID=28&sectionID=1665359#46117
彼らは、統合失調症の病期を3つにわけており、急性期の有効性研究では抗精神病薬とプラセボとの比較による二重盲検試験により抗精神病薬の有効性が確認されているが、長期投与の根拠とは言い切れないとしているようです。抗精神病薬の短期的な服薬中止研究では、中断後の初期の6~10ヵ月以内に25~55%の患者が再発するものの、この期間に再発しなかった人は、それ以降、薬物療法なしでも再発率は低いとあり、さらに、長期縦断研究をまとめてみると、薬物維持治療が必ずしもよりよいリカバリーをもたらしていないということを述べています。

結論として、筆者らはすべてのこの診断を持つ方々が長期抗精神病薬投与を必要とすると決まっているわけではないことをしめしており、今後さらなる縦断的な調査が必要だとしています。どれくらいの比率で統合失調症者は抗精神病薬の維持治療で利益を受ける人がいるのか、また、どのような因子が維持治療を必要としない人の特性として同定されるのか、それらの人は区別することが可能なのか、といった問題点について、さらなる研究の重要性が示唆されたと結んでいます。

Pubmedで抄録を読むことができます→http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23512950

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。