メラビアンの法則
- 2008.07.18
- 日記
私たちの仕事では、人との交渉がたくさんあります。
交渉ごとでは妥協も必要になってきますが、やりたいことをやっていくためには「営業」あるいは「説得」のスキルが必要です。説得のスキルとしてはさまざまな対人関係技術のノウハウがあります。SST(Social Skills Training=社会技能訓練)なんかも応用できそうです。ビジネスマナーも、こういった点に着目して構成されています。
ビジネスの分野では「メラビアンの法則」というものがあります。
これはアメリカの心理学者Albert Mehrabianが1971年に提唱したものとされており、人の行動が他人に影響を与える因子は
1.視覚要因(表情、動作、視線、立ち振る舞い、服装)55%
2.聴覚要因(声の高低・大小・強弱・スピードなど)38%
3.話題の要因(話し内容、言葉自体の意味)7%
だというものです。つまり、この法則では、ビジネスでは交渉の場面において視覚情報の重要性が強調されるというものです。たしかに、見た目が大事だということはいえると思います。
でも、なにか釈然としないものがあります。目と耳と内容だけで印象の大半決まり、3つの要素だけで100%ぴったりになっちゃうのは納得できない気もします。さらにいえば話題の要因が7%とは、「何を話しても一緒」ということになってしまうような気がします。
実は、彼の行った実験とは、次のようなものだったそうです。
- まず、「好意」「嫌悪」「中立」のニュアンスを表す単語を3つずつ合計9つ選び、それぞれ、「好意」「嫌悪」「中立」の声色で話者がテープレコーダーに録音する。
- 「好意」「嫌悪」「中立」の表情をした顔写真を1枚ずつ用意する。
- 被験者は、「言葉」と「声色」と「顔写真」をアトランダムに組み合わせて提示され、話した者の感情についてどう判断したかを調べる。
(怒った顔の写真を見せられ、嫌悪するような声で、好意的な言葉を聞かされた場合に、被験者が話した者の感情を「好意」と判断したら、表情や声色よりも言葉のインパクトが強いということになる。)
言葉といっても「単語」。視覚情報といっても「顔写真」。こんなアバウトな実験で、普通に思われている印象と違った結果が出ても驚くものではないでしょう。「単語」でしか言葉の内容がなければ、相対的に他の情報が優位に立つのは当然だと思います。
この実験は、コミュニケーションにおける各要素の伝達力を検証したものでもなければ、プレゼンテーションでの影響を想定したものではなかったのです。メラビアンが実験で確かめたかったのは、「視覚」「聴覚」「言語」で矛盾した情報が与えられたときに、人はどれを優先して受け止め、話者の感情や態度を判断するのか、ということでした。
メラビアンの法則を取り上げて「視覚情報は印象の55%を決める」「だから服装や立ち居振る舞いが一番大事」というのはもともとの実験の都合の良い解釈でしかありません。日本のビジネス業界では、この実験は「言葉で何を語るかよりも、いかに見せ、いかにアピールするかの方が大事」という解釈としてまかり通っています。
活字や”エビデンス”を疑いなく受け入れてしまうことには慎重でなければなりません。情報を得て行動を起こそうとする際には、情報の確かさを自ら確認する努力が不可欠なのだと思います。これが”リテラシー”といわれるものであると思います。
↓より詳しい解説はこちらから
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/d74.htm
(wrote:財団法人 住吉病院)
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