アメリカの障害者保障2

アメリカの過去の動きは勉強になります。

アメリカの社会保障体制拡充に関して、SSDIは1956年に導入されました。その後対象者を拡大する改革が行われましたが、次第にSSDIの伸び率は財政を圧迫しはじめました。このため連邦政府は障害給付の拡大を抑えるために1970年代後半から1980年代初頭にかけ認定基準の運用を厳しくしましたが、給付の誤った打ち切りが生じるなど対応の行きすぎが批判されるようになりました。

その後、1990年代に入るとふたたび新規裁定件数は伸び、受給者数が大きく増加しました。また、障害によるSSIの受給者についても1990年代に急速に増加しました。そして障害給付受給者が増大すると同時に、障害者の就業率の低下も見られたのです。1990年に制定された「障害をもつアメリカ人法(Americans With Disabilities Act of 1990=ADA)」では障害者雇用について、事業主に対して合理的な配慮を義務付けており、障害者差別の禁止が図られました。しかし、それでも障害者の就業は増えませんでした。

この時期にIPSはエビデンスのある就労支援として拡大してきたわけですが、1990年代中盤から終盤にかけて、アメリカでは障害給付改革が行われました。有名なのは社会保障の独立とプログラムの改善に関する法(Social Security Independence and Program Improvements Act of 1994)と就労チケットおよび就労インセンティブ改善法(Ticket to Work and Work Incentives Improvement Act of 1999)です。

社会保障の独立とプログラムの改善に関する法では障害給付プログラムに関連するいくつかの改革がありました。まず、薬物ならびにアルコール依存から生じる障害への給付を中止しました。また、障害給付受給者の受給資格を継続するための再審査の回数が増やされました。こうした障害給付金削減の手段が先行した後に、障害者の就労を支援することが始まりました。

似ています。わが国の状況に。日本で今起こっていることはアメリカでは15年くらい前に起こったことのような気がします。後進の我々は、先輩国の失敗まで含めた経過をトレースするのではなく、より良い改革のために学ばなくてはならないと思います。

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(wrote:財団法人 住吉病院