CATIE試験
- 2007.08.15
- 日記
Lieberman JA, Stroup TS, McEvoy JP, Swartz MS, Rosenheck RA, Perkins DO, Keefe RS, Davis SM, Davis CE, Lebowitz BD, Severe J, Hsiao JK (Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness [CATIE] Investigators): Effectiveness of antipsychotic drugs in patients with chronic schizophrenia. N Engl J Med 2005; 353:1209-1223
統合失調症の薬物利用において、アメリカ米国立精神衛生研究所(NIMH)が中心となって進められたClinical Antipsychotic Trials of Interventional Effectiveness(CATIE)と呼ばれる臨床試験があります。これは、18カ月間にわたり57施設の統合失調症患者1460例を対象に行われた、過去最大規模の試験のひとつでした。
第1段階では、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン(本邦未発売)の4つの新規抗精神病薬と、従来型抗精神病薬としてペルフェナジンの二重盲検法による投与群に参加された患者さんを無作為に割り付けました。
第2段階では、クロザピン(本邦未発売)の非盲検法による投与または第1段階で投与しなかった別の新規薬の二重盲検法による投与のいずれかに患者さんを無作為に割り付けました。ペルフェナジン選択群は、第2段階では除外されました。
さらに参加された患者さんは、第3段階として、精神科医と相談して選択した薬剤の非盲検試験に参加することができました。
その結果、第1段階では、参加者の74%が主治医と相談の上、何らかの改善を期待して薬剤の切り替えを選択しました。また、第2段階では、クロザピン投与に無作為に割り付けられた参加者は他のグループより改善されたことが認められました。
当初、CATIE試験の投与から示唆されたことは、次のようにまとめられました。
・ペルフェナジンを慎重な用量レベルで処方することは悪い治療ではない。
・有効性が求められ、体重増加や代謝作用が関心事でない場合には、オランザピンを用いる。
・クロザピンは持続性症状のある患者に用いるべきである。
・従来の治療薬投与を受けているが、効果が認められない患者には、クエチアピンを用いる。
・体重コントロールや代謝作用が問題になる場合には、ジプラシドンを用いる。
・これらの妥協案としてはリスペリドンを用いる。
ペルフェナジンが、他の新規抗精神病薬との間で有用性に統計的有意差をつけられなかったことから、この結論は広く注目されることとなり、「ジェネリック薬と新規薬剤の有効性は同等」というセンセーショナルな見出しの記事がマスメディアに掲載されました。
しかし、CATIE試験では倫理上の理由から遅発性ジスキネジアのある患者はペルフェナジンには振り分けられておらず、これはペルフェナジンにとって有利に働いたと考えられます。遅発性ジスキネジアがない患者さんは比較的薬剤反応性が高く重篤度が低いと考えられるからです。
このことから見かけ上ペルフェナジンの有用性が高くなっているかもしれないという指摘がありました。その他にも、この他にもいくつかの疑問点が指摘されており、臨床家の間では「早急に結論すべきではなく、この研究のあいまいとしている点の解明を待つべき」という意見も少なくなかったということでした。
(http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/163/3/554)
このまま、試験デザインに不備があったとして、この大規模研究の結果のすべてが無効になってしまうのは惜しいと思います。
(wrote:財団法人 住吉病院)
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