ベンゾ離脱に関する医学的管理の問題

Dimy Fluyau, Neelambika Revadigar, and Brittany E. Manobianco: Challenges of the pharmacological management of benzodiazepine withdrawal, dependence, and discontinuation. Ther Adv psychopharmacol. 2018 May; 8(5): 147–168
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5896864/

 若干古いのですが、ベンゾジアゼピン(BZD)減薬時に他の薬を利用できるかについてのレヴューがあったので読んでみました。

 この論文ではBZDの中止の管理に提案された薬剤の課題、その有効性、乱用のリスク、関連する医学的合併症について述べられています。

方法:著者らは1990年から2017年までのMedline, Worldwide Science, Directory of Open Access Journals, Embase, Cochrane Library, Google Scholar, PubMed Central, PubMedの電子検索を実施しました。レビューには、観察研究に加え、大部分は二重盲検プラセボ対照試験、オープンラベルのパイロット試験、動物試験も含まれており、レビュー論文、自然主義的研究、そしてより少ない程度ではあるが、編集者への手紙/症例報告にも検索を拡大してありますが、抄録やポスター発表、書籍、本の章は除外しているとのことです。検索に関しては545件の論文を複数回に分けて分析した結果、日本語、中国語、韓国語の論文250件、フランス語の論文8件を除外され、さらにBZDs の長期使用に焦点を当てた 73 件、研究開発に焦点を当てた 29 件、健康、原子力、コース・ライフサイエンスに焦点を当てた 30 件の論文を排除したとあります。最終的には残りの85件の論文から、抄録、学会、書評、書籍などを除外して50件を選んだ後、37 件の論文が考察されました。ランダム化研究が少ないため、メタアナリシスを行うことはできませんでした。

 文献レヴューの結果、ベンゾジアゼピン系薬剤の代替・中止法として検討した薬剤リストの中から7種類の薬剤が他の薬剤と比較して良好な結果を示したとされています(訳注:7つとは:カルバマゼピン・プレガバリン・フルマゼニル・ドチエピン・ジアゼパム・イミプラミン・シアメマジン)。抗うつ薬ドチエピンと抗精神病薬シアメマジンは日本では薬価収載されていないものです。

 これらを踏まえて、筆者らはこれらの薬剤の有効性は確固としたものではなく、これらの薬の中には、比較的安全に使用できるものもあるが、中には治療域が狭く、生命を脅かすような重篤な副作用を持つものもあると指摘しています。また、無作為化試験は限られているため、比較研究は乏しいため、このレビューにはいくつかの限界があると認めています。BZDの減断薬を推進するためのゴールドスタンダードアプローチは存在せず、最も一般的な方法はテーパリング(緩徐な減量)であるとしています。テーパリングは処方されたBZDを仮想的な割合で徐々に減らしていくもので、不快感を避けるために他の薬物も併用されることがありますが、これらの薬物は二重盲検無作為化比較試験が少なく、エピソード、単一症例報告、意見に基づくものばかりであるとしており、BZDの減断薬の薬理学的管理の重大な課題として、副作用、リスク、ベネフィットの分析が不十分である、としています。

 私自身の実践では、BZDの減薬は、ご本人とご相談をしながら、ゆっくりと減量し、場合によってジアゼパムに置き換えを行い、時にカルバマゼピンを使用しながら、この論文が参照している文献のうちでトラゾドンとバルプロ酸を服用した患者の方がプラセボよりも多く、少なくとも5週間はBZDを服用せずにいられるという報告から睡眠障害に対してはこの2剤を試みるなどしています。

 同時に、アシュトンマニュアルを参照しながら、不安軽減のためにそれぞれの方が利用されているアプローチについて一緒に検証し、精神科薬物療法サポートセンターの助言を受けたり、サポートハウスとびらの「処方薬ミーティング」などもご紹介しながら診療を進めています。「ズバ切り(即時断薬)」ならびに「デトックス」はまったく推奨していませんし、高価なサプリメントもお勧めしていません。なにより、減断薬に取り組んでおられる多くの方々のご体験から日々学ぶものが大きいのだと感じています。

サポートハウスとびらでは毎月第3木曜日の18時から19時、「処方薬ミーティング」を行っています。7月はもう過ぎてしまいましたが、こんな感じでお知らせをしています⇒https://supportobira.blogspot.com/2023/07/blog-post_10.html

ちなみに、8月は17日の予定だそうです。

 

 

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。