アニマル-アシステッド・セラピー(その3)

AAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)についてPubMedを検索していたところ、統合失調症の診断をお持ちの方々に対する有効性を検討したレビュー論文もあるようです。

Emma L Hawkins , Roxanne D Hawkins , Martin Dennis , Joanne M Williams , Stephen M Lawrie :Animal-assisted therapy for schizophrenia and related disorders: A systematic review.J Psychiatr Res. 2019 Aug;115:51-60.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31108372/

アブストラクトしか読んでいませんが、筆者らによると、統合失調症および関連疾患に対するAATの有効性を評価するための無作為化比較試験(RCT)を系統的にレビューした。主要アウトカムは、精神状態と行動、臨床的全般的反応、QOLとウェルビーイングとした。年齢、性別、環境、重症度、罹病期間を問わず、統合失調症(または関連障害)の臨床診断を受けた参加者を対象に、AATまたは他の動物介在介入を対照群と比較したRCTを研究対象とした。7件の研究がレビューの対象として確認されたが、アウトカム指標や介入方法に顕著な違いがあるなど、研究の異質性によりメタ解析は不可能であった。7件の研究のうち5件が症状をアウトカム指標としており、1件が陰性症状の改善を、1件が陽性症状および感情症状の改善を報告していた。残りの研究は、AATの有意な効果を報告していない。3つの研究では、QOLをアウトカム指標としていたが、有意な効果は認められなかった。しかし、2つの研究では、自己評価の様々な尺度における改善が報告された。
筆者らは統合失調症に対するAATの使用はまだ結論が出ておらず、研究の異質性、バイアスのリスク、サンプルの少なさから、確固たる結論を出すには十分なエビデンスがないのが現状である、として、統合失調症に対するAATの真の影響を評価するためには、厳密で大規模なRCTが必要である、と結んでいます。

一方で、統合失調症と依存症の重複障害を持つ方へのAAT介入の前向き研究もありました。

Miguel Monfort , Ana Benito , Gonzalo Haro , Alejandro Fuertes-Saiz , Monserrat Cañabate , Abel Baquero:The Efficacy of Animal-Assisted Therapy in Patients with Dual Diagnosis: Schizophrenia and Addiction.
Int J Environ Res Public Health. 2022 May 30;19(11):6695.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35682281/

これもアブストラクトのみで恐縮ですが、統合失調症スペクトル障害と物質使用障害の重複診断を持つ患者における在宅治療における動物介在療法(AAT)プログラムの有効性を評価するために準実験的な前向き研究が行われた。AATプログラムに参加する患者は臨床的安定を持続し、生活の質と治療への遵守を改善した。36 人の患者 (実験群21 人、対照群 15 人)は、3 つの時点 (セッションの3 回目、6 回目、および 10 回目) で評価された。プログラムは 3 か月間、週に 1 回実施される 10 セッションで構成され、1グループあたり最大10人の患者が参加できた。参加者は、統合失調症の陽性・陰性症状評価尺度 (PANSS) とライフ スキル プロファイル 20 (LSP-20) アンケートで評価された。セッションが進むにつれて、精神病の陽性症状の減少 (F: 27.80、p = 0.001) と機能の改善 (F: 26.70、p < 0.001) が観察された。筆者らはこれらの結果に基づいて、AAT は統合失調症と依存症(重複障害) と診断された患者のリハビリテーション プロセスの一環として、補助療法として有効であると思われると結論付けた。

 

 

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