先生は精神科医の何に魅力を感じているのですか?
- 2017.11.28
- 日記
弊法人では、山梨大学医学部の医師を志す学生の諸君の臨床実習を支援しています。
おおよそ5年時の学生さんのグループに1日弊法人のさまざまな部署の活動状況をご覧いただいて、午後の最後に学生さんたちの感じた事柄などについて私と意見交流をする、というのが定番の実習カリキュラムです。
多くいただくご感想としてはポジティブなものとして
・精神科の患者さんが自分の意見をはっきり表明して交流していること
・法人として急性期からリハビリまで一貫して支援が提供されていること
・法人全体として「回復とは何か」を意識して支援するという理念が共有されている
・病院を利用した経験者がスタッフとして働いていること
などが多いのですが、もちろんネガティブなご意見もいただきます
・外に出られない病棟にずっといる人がショックだった
・そういう人は将来どうなってしまうのだろうという不安をもった
・スタッフの数が少ない
・こわい、というイメージが残った
などであり、こういうご意見からは精神疾患を持つ方々への歴史的な差別の話、医療法上の特例や怖いと感じる行動を症状と捉えるのか、困難な状況についてのその方なりの表現であると受け止めようとしているという話が私から引き出されていきます。それらはいわゆる身体科、と称されている臨床場面にもうっすらとあるかもしれず、それらを身体科の患者さんのお立場の方々は口に出さないようにしているのではないかという思いもある(もちろん、精神科病院特有の問題は間違いなくあります、と念を押したうえでです)ことなどお伝えします。私にとっては精神医療保健福祉の分野に長年いて鈍ってしまっているかもしれない感性を再び磨くことのできる貴重なひと時です。
私はいつも、ミーティングの最後に「ご質問をお持ちでしたら可能な限りお答えします」とお話します。一点二点、ご質問をいただく場合もあるのですが、「いえ、大丈夫です」という反応をいただくことの多い問いかけのように思います。
ある日、一人の学生さんから「先生は精神科医の何に魅力を感じているのですか」というご質問をいただきました。自分自身、このような正面切っての問いかけを学生さんからいただいたことはおそらく初めてでした。というのも、「精神科医の魅力」などのご質問は幾たびか頂戴したのですが「先生にとって」という、生身の人間として質問をいただいたことがあまり記憶になかったからです。過去の自分の経験、今ある私の周りの仲間たちや知り合いの人々との対話、そして自分の目指している法人のあり方など、頭の中でぐるぐると対話がおこりました。
さまざまな個人的な経験や親の手掛けていた仕事の延長線上に今の自分がいること、さまざまな臨床経験が学びとなることにより、自分自身が徐々に深まって成長していっていると感じていることなどをお話ししました。そして最後に
「自分が応援をしている人が、自ら大きく人生を変えていこうとする場面に立ち会えること」
という言葉が出ました。ご質問をいただくまでは、仕事については人を助けるという意味合いを強く思っていたのかもしれませんが、その根底にある自分自身のモチベーションを支えているものに気づかせていただいたのでした。もちろん「改善すべきことのあまたあるしごとをしていて何を言っているのか」というご批判をいただくかもしれませんが、正直に思ったことが口から出たと感じました。
ご質問をしてくださり、私と対話してくださった諸君に感謝します。
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
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