好きな仕事をして輝いた自分に・・・

7月18日に京王プラザホテルで行われた日本精神科病院協会主催の精神保健指定医研修会で、同僚と一緒に講演をしてきました。

会場には、全国から集まった、精神保健指定医を所持し更新をされる精神科医の方々が300名くらいはおられたでしょうか。ホールはぎっしりとうまっていました。最初に私がリカバリーとIPS(Individual Placement and Support)援助付き雇用についてお話をさせていただきました。今回は内容をバージョンアップし、現在弊法人で一緒に働いている精神的困難を経験した同僚についての話をさせていただきました。在職者の多くは1年以上法人に勤務しており、援助付き雇用が弊法人に根付く前から自分自身の努力で職場を得、健康管理をして働く生活を続けている人々です。就労支援活動をしているメンタルヘルス分野の事業所も増えてきましたが、「一緒に働いてみる」ことは支援の方法を学ぶことには最適であり、また、医療機関にはさまざまなしごとが存在するため、業務の切り分けをすることで、働くことのできる方を雇用し、また、いわゆる専門職が資格を有して行う本来業務に専念することが可能になると思っています。

私の話のあとに登壇した同僚スタッフは、法人が援助付き雇用の推進を行うよりも前から自分自身で道を切り開いてきた人ですが、病いを得てから自分自身に起こった変化、長い入院生活、作業療法のいわゆる単調な作業がどうしても自分にあわなかったこと、退院後に調子を崩したときに、どうしても再入院したくないと主治医に申し出てデポ剤の治療を選択したこと、作業センターに通所していたが、袋詰めのような仕事はどうしても合わないと思っていた中、自分のやりたい仕事が法人の中にあると知って応募して現在のパート職につくことができたこと、職場では法人外の(利用者でも支援者でもない)パートの人々と一緒に働いていることの意義などを話していただき、最後に「私のしてきた経験が、先生方やスタッフの皆さまの少しでもお役立てれば幸いです」で締めくくりました。

何回か同僚の話を聞きましたが、その場に集まった方々を通して、まだ見たことのない、遠くの仲間へのメッセージを送ろうという気持ちを強く感じたのは今回の発表が初めてでした。後できくと、最近になって薬を減量しデポ剤を2週間に1度の副作用の少ないタイプに変更してから、「調子の悪かった時のことを記憶として思い浮かべることができるようになった」という話でした。以前は、よくなかった頃の体験を思い起こすと、そのころの気持ちが再びやってきて、調子を崩すことにつながっていたのですが、今は頭がすっきりしてきているし、体調管理のコツもわかるようになったので、自分にどういうことが起こったのかを振り返ることができるようになったと教えてくれました。

職場開拓には「今、頑張っている人からのメッセージ」が本当に素晴らしい後押しになっているのだとあらためて学ぶことのできたひと時でした。

今回は、講演会についてのアンケートを取らなかったのですが、研修会事務局のご承認のもと、協会のおとりになったアンケートの回答の一部を教えてもらいました。

・画期的な話。回復したという事例とかいうのではなく、当人が肉声で話した点、又その
 内容からQOLが実現されているのがよく分かった。
・IPSの話がとても興味深かった。当事者の体験談が聞けたことが良かった。
とても参考になりました、特に後半、当事者の話や就労支援の話、考えるべきことは
 沢山あるけど・・・有難うございました。(同様意見4)

要するに、精神障害者をもっと働かせて、障害者への税金投入を抑えたいということ?
・生活臨床ですね、当事者の方のお話も良かったです。(同意見2名)
・症例の記載など、分かり易かった。また、臨床上の日頃の疑問にも答えていただけた
 と感じた。
・IPS援助の考え方に希望を感じました(わくわくしました)。これまで就労可能かどうか
 判断を求められても「やってみないとわからない」と答えてきましたが、やはりそうだ
 と思いました。素晴らしいお話でした。
・なぜこのテーマを指定医の更新研修で毎回やるのかが、意味不明。大事な話だし、
 内容も良いと思ったけど、良い講演だったので余計に(演者と講演内容とは全く別の
 問題として)なぜ指定医の更新研修でこれをやるのかな?と。指定医の前に精神科
 医全員が心得てしかるべき内容なので、別の機会がよいのでは。で、その分の時間
 で、医療保護入院の話など、指定医が今するべき話を、もっとしませんか?
 (同様意見8)
・強いリーダーが必要ですね!
・当事者雇用を考えたことはあったのですが、実現可能なのですね! 小澤さんのお話
 もとても良かったです、私たちに希望を与えてくださいました。これからも輝き続けて
 ください。
 (研修会の)固い話ばかりの中でオアシスのようでした。私たちの原点を、喜びを分ち
 あうことなんだ、と気づかされました。
・当事者の話も良かったが、スタッフに「いらっしゃる」等の敬語を使っていて、「してもら
 っている」という感覚もあるんだな、と思いました。

いろいろなご意見がありましたが、当事者やご家族での講演とは異なった精神科医の方のご意見がうかがえたことは、今後に向けてのよい学びとなりました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。