BACS-Jを看護に生かす

先日、3病棟で業務をしていたところ、OTRの面々がナースステーションの中でスライドを始めました。なにをするのかと眺めていると「BACS-Jについて」のプレゼンテーションでした。

BACS-Jは「統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版」の略で、統合失調症の認知機能障害を従来のバッテリーよりも簡便に評価しようとするものです。

統合失調症の認知機能に関する研究そのものは、おおよそ100年前からあり、統合失調症(Schizophrenie)という診断名の生みの親である、ブロイラー博士も、この統合失調症の中核には「思考の関係性がスムーズでなくなる=連合弛緩」のような認知機能の障害があると考えていました。

今では認知機能の障害は、陽性症状による集中の妨害によるものでも、薬物療法の副作用によるものでも、動機づけの低下によるものでも、陰性症状と関連はしていても、陰性症状そのものではなく、そして知的機能の低下によるものではないことが判明しています。

つまり、認知障害は独立した障害であるというわけです。そして近年の研究では、認知障害が精神症状・社会機能などとの関連において基本的な障害であると考えられるようになったのです。

では、統合失調症における認知障害とはどのようなものなのでしょうか。

・全般性言語記憶と学習能力の低下
・作動記憶と長期の記憶再生の障害
・注意持続と注意集中時の情報処理容量低下
・言語流暢性低下

などが、統合失調症において起こる認知機能障害といわれています。そして、この障害によって社会生活機能や社会的認知の障害が引き起こされるとされています。

住吉病院では、就労支援場面に生かそうという目標が発端となり、作業療法士によるBACS-J評価を臨床に生かしていますが、「気持ちの問題ではない」記憶や集中力の障害を実感し、対策を考えることでスムーズな生活が送れるようになっている場面もあるようです。日常場面で、患者さまが「わからない」「理解してくれない」と思ってしまうこともある看護スタッフにおいても、それが、スタッフへの感情面ににょるもんではなく記憶に関わる認知機能の障害であることが理解され、よりシンプルでわかりやすい入院患者さまとのコミュニケーションを行っていくためのヒントになればいいな、と思いました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。