遠いできごとは未来につながっている

リカバリーフォーラムの懇親会での出来事でした。リレーあいさつ?で自分が話をしおわったときに、呼びかけられました。声をかけてくださったのは 社会福祉法人「はらからの家福祉会」理事のI様でした。

国分寺市南町にある「はらからの家福祉会」は「自立支援法」も「退院促進」もまだ影も形もない1981年、身体、知的も含む障がい者全般を対象に、民間アパートを借り上げて専門スタッフの支援を受けて共生生活を営む「グループホーム」事業を始められました。ところが、申し込みの大半が精神的困難を得た経験をお持ちの方で占められたため、次の年には対象者を絞込み特化して、都内でいち早く、住居確保の支援を始められたところでした。現在は、同市内に4ケ所のグループホームを設置し、1ケ所の地域生活支援センター、2つの公益事業所を開設しておられます。現在も各方面・地域で事業や講演会などを展開している精神科領域の地域生活支援に関しては草分けのところです。

今から遠い昔、12年前でしたか、はらからの家が火事になったことがありました。当時は同じ多摩地区の精神科病院に勤務していた私は、「精神障がいをお持ちの方は退院しても住む場所がない」ことや「住む場所がなくなることは誰にとっても大変なこと」だと思っていましたので、知り合いや家族、家族の知り合いなどにも声をかけてボランティアごっこをさせていただいたのでした。

そのときにスタッフの皆さまが入居者の方それぞれの健康を気づかい、住む所がないといって「病院に避難」という発想を持たずに夜遅くまで奮闘しておられた姿に、私は大きな感銘を受けました。

はらからの家福祉会様はそこから見事に回復して、今日もさまざまな方々のために大いに役立っているのは私にとってもうれしいことです。その理事であるI様のご活躍も遠くから見聞きして元気をいただいておりました。そんなI様から「あの火災のときにいち早くかけつけてくださってありがとうございました」という言葉をいただいた私は、ただただ恐縮するばかりでした。

私にしては珍しく人目をはばからずハグなどしてしまいました。ずっと以前にかけた一言を座右の銘にしてくれて、回復された姿を見せてくださった、かつて私と治療のかかわりを持ってくださった方のことが頭をよぎりました。

ちょっとでも誰かの役に立つことができると、私はとてもうれしく感じるものだということを、そして遠くのできごとが今につながっていて、きっと今のできごとは遠い未来につながっているのだということを思いました。I様、本当にありがとうございました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。

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(wrote:財団法人 住吉病院