デポ剤による維持療法

精神科薬物療法では、持効性注射製剤(デポ剤)が使用されることがあります。いったん注射をすると2~4週間、薬の効果が持続するということから、かつては「入院していて、薬を飲むことを嫌う患者」を対象として使用されてきた向きがあります。

しかし、デポ剤の本来の使い方としてはその方法は間違っています。

1.再発性の精神病症状があること
2.抗精神病薬による治療歴があること
3.治療者との間で治療を継続する意思がはっきりしていること
4.再発が怠薬に大きく関係していると思われるもの

医師、コ・メディカルと患者様の間で信頼関係があることがデポ剤使用には重要です。強制的な治療は入院中はできるかもしれませんが、地域で訪問を含めた診療を展開していく場合には、適切な薬物治療の継続が非常に重要な位置をしめてきます。

デポ剤を使用することは、ご家族と患者様ご本人の間での「薬を飲む/飲まない」という不毛なやりとりをやめることができますし、訪問スタッフが短い滞在時間を服薬確認で使ってしまうことからも解放されます。デポ剤がある薬の種類は少ないので、経口薬ほど融通はきかないかもしれませんが、多剤併用療法にはなりにくいともいえます。

今年の論文にも以下のようなものがあります。

Zhu B,Ascher-Svanum H,Shi L,et al.:Time to Discontinuation of Depot and Oral First-Generation Antipsychotics in the Usual Care of Schizophrenia.Psychiatr Serv 59:315-317,2008

これは統合失調症の維持治療に関して、定型抗精神病薬の何らかの理由による中断までの期間を経口治療とデポ治療の間で比較したものです。

この研究は、統合失調症の3年間の前向きで非ランダム化多施設研究からのデータを使用しています。ハロペリドールまたはフルフェナジン(N=202)の経口薬で治療を開始された参加者は、その後1年間に中断を引き起こすまでの期間に関してハロペリドールもしくはフルフェナジンのデポ剤製剤で治療された(N=97)群と比較されました。

経口製剤を用いた治療を受ける参加者と比較して、定型抗精神病薬のデポ剤による治療を受けた患者は、すべての理由による薬物中断を引き起こすまでに有意により長い平均期間を持っており、2倍薬物維持治療にとどまる可能性があった。

したがって統合失調症の通常ケアにおいて、デポ剤での治療は、同じ薬物の経口製剤と比較して薬物中断を引き起こすまでの時間がより長いように見える。

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(wrote:財団法人 住吉病院