感情表出とご家族へのサポート
- 2008.05.28
- 日記
統合失調症に関して、家族心理教育はご家族間のEEを下げ、再発防止には欧米でもすでに科学的根拠のある実践(Evidence Based Practice;EBP)として有効性が立証されています。
家族心理教育では、一家族ごとに行うものと多くのご家族に合同で参加していただく複数家族のものがありますが、効果に関しては有意差はないとされています。たいていの機関では、まず専門家による情報提供を行い、そのことに関連した質疑応答、そしてご家族同士による話し合いを行っています。スモールグループに分かれた話し合いはグループごとに1時間から2時間ほど話し合います。各グループにはさまざまな困難を抱えたご家族、スタッフ、それに当事者ご本人が混ざり、あるご家族の抱える困難について全員で考え、さまざまな対処方法や先輩の体験、専門家からのアイデアが発表されます。その中からメリット/デメリットを検討した上で、相談された方ご本人が、自分に役立つものを選択することになります。
心理教育では、EEの指標のうち、Emotional overinvolvement(EOI:情緒的巻き込まれすぎ)は対象群に比べ改善するとされています。一方で批判的コメントは対象群との間で有意差は見られませんでした。これは、当事者ご本人の精神状態が改善されるに従って自然に改善していく傾向にあるからかもしれません。 しかし、一方ではCRこそが統合失調症患者さんの再発に関与しているという意見もあり、こういった患者さんとご家族こそが家族心理教育の利用によって、再発率を有意に下げることへの恩恵を得るべきだともいわれます。
Hogarty,らの有名な研究は、
Hogarty GE,Anderson M,et al:Family psychoeducation, social skills training, and maintenance chemotherapy in the aftercare treatment of schizophrenia. II. Two-year effects of a controlled study on relapse and adjustment. Environmental-Personal Indicators in the Course of Schizophrenia (EPICS) Research Group.Arch Gen Psychiatry. 1991;48:340-347
ですが、この論文では、薬物療法へのアドヒアランスが確保されている場合、家族心理教育は統合失調症患者さんの退院後2年間の再発率を有意に低下させるとしています。一方でSSTでは退院後2年目の再発延期効果はなくなっていくとされました。
また、
Pfammatter M,
では、これまでの心理社会的介入をメタ分析したレビューが示されていますが、この論文では、利用可能なメタ分析から、SST、認知改善プログラム、家族のための心理教育的介入は、持続的な陽性症状への認知行動療法と同様に、薬物療法への有効な補完的治療として認知されました。SSTは、一貫してソーシャルスキルの獲得を有効にし、認知改善プログラムは、認知機能の短期的改善をもたらします。家族介入は再入院や再発の率を減少させ、また、認知療法は陽性症状の減少をもたらします。これらの利点は、社会機能におけるわずかな改良が伴うように見えます。しかしながら、このレビューでは未解決の問題として、日常的なケアで同様の所見が再現されるのか、その特異的な治療の成分とは何か、適応はなにか、相乗効果はどうか、といった点が残る、と指摘しています。アブストラクトは↓で読むことができます。
http://schizophreniabulletin.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/32/suppl_1/S64
今後、地域における精神科医療を展開するならば、いろいろな関わりの中でこのようなご家族へのサポートはますます重要になるのではないでしょうか。
(wrote:財団法人 住吉病院)
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