統合失調症における認知機能

精神障害のうちでも、もっとも重要な疾患(もしくは症候群)の1つである統合失調症ですが、その症候学をスタッフのはみなさんは知っていますか?

統合失調症の症候分類は、私たちが学生だった頃は幻覚や妄想といったわかりやすい症状群である「陽性症状」と引きこもりや感情表出が鈍くなるようにみえる「陰性症状」の2つに分けられていました。

20世紀の中盤以降は薬物療法、主に抗精神病薬による陽性症状のコントロール可能性から、ながらくこの2つの症候のバランスが統合失調症の病理を説明する際の仮説として通用してきました。しかし、前世紀の末頃から統合失調症の認知機能について関心が高まってきていました。最近は、多くの論文で認知機能の障害についてふれられるようになってきています。

しかし、実は統合失調症の認知機能に関する研究そのものは、おおよそ100年前からあったそうです。そもそも、統合失調症(Schizophrenia)という診断名の生みの親である、オイゲン・ブロイラーも、この統合失調症の中核には「思考の関係性がスムーズでなくなる=連合弛緩」のような認知機能の障害があると考えていました。

今では認知機能の障害は、陽性症状による集中の妨害によるものでも、薬物療法の副作用によるものでも、動機づけの低下によるものでも、陰性症状と関連はしていても、陰性症状そのものではなく、そして知的機能の低下によるものではないことが判明しています。

つまり、認知障害は独立した障害であるというわけです。そして近年の研究では、認知障害が精神症状・社会機能などとの関連において基本的な障害であると考えられるようになったのです。

では、統合失調症における認知障害とはどのようなものなのでしょうか。

  • 全般性言語記憶と学習能力の低下
  • 作動記憶と長期の記憶再生の障害
  • 注意持続と注意集中時の情報処理容量低下
  • 言語流暢性低下

などが、統合失調症において起こる認知機能障害といわれています。そして、この障害によって社会生活機能や社会的認知の障害が引き起こされるとされています。

*社会的認知とは「社会的交流の根底にある精神機能で、他者の意図や性向を受止める人間としての能力を含む」(Pinkham AEら、2003)です。

中でも重要視されているのがワーキングメモリーの障害ですが、長くなりましたので、続きは後日アップします。

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(wrote:財団法人 住吉病院