コ・プロダクション/コ・クリエイション

Åkerblom KB, Ness O:Peer Workers in Co-production and Co-creation in Mental Health and Substance Use Services: A Scoping Review.Adm Policy Ment Health;50(2):296-316,2023
doi: 10.1007/s10488-022-01242-x. を読みました。

 世界では、精神保健上の困難を経験した人々は、メンタルヘルス分野で、いわゆる「ピアワーカー」として広く雇用されています。その人たちはリカバリー志向のサービスを発展させる上で不可欠な役割を果たすことができるといわれますが、「ピアワーカー」の役割として、協働すること(コ・プロダクション)と共創(コ・クリエーション)の形でコラボレーションすると概念化されています。

 コ・プロダクションとは、サービス提供の時点における提供者と利用者の協働を指す概念で、コ・クリエーションとは、サービス提供の実践を含む初期段階(例えば、委託や設計)から始まる価値の創出を指すとされます。

 専門職と当事者(ピアワーカー)が協働してなにかのサービスを作り上げていくことがコ・プロダクションであり、何をするのかのアウトラインはあらかじめ決まって/与えられています。一方、専門職と当事者・利用者がどちらからもアクションを行い、どちらかが欠けると生み出されないような「価値の創出」をすることがコ・クリエーションということだそうです。

 著者らは「ピアワーカー」の関与について記述された研究文献を概観し、その結果、「ピアワーカー」は協働に関与し、あらかじめ決められたサービスの提供者として、そして最も多くの場合、ピアサポートの提供者として機能していることがわかったといいます。しかし、共創のパートナーとして関わることはほとんどなかったようです。

 これまでの研究では、「ピアワーカー」は入院を減らし、サービスに対するクライエントの満足度を高めることでサービスの価値を高め、彼らの自律性と自己決定を確保することで、サービスにアクセスする人々の転帰を改善するのに役立つことが確認されています。しかし「ピアワーカー」の有効性について、狭い医療福祉的な側面だけから論ずるだけでいいのでしょうか。ピアサポートの本質的な構成要素を考えると、「ピアワーカー」がどのように社会的、感情的、実際的なサービスを個人的な経験を活用して、精神的困難の中に閉じ込められている方にコミュニティへの扉をあける橋渡しをするか、ということも重要なことなのではないでしょうか。

doi: 10.1007/s10488-022-01242-x. より引用

 なお、この研究では、リカバリーカレッジを評価または記述した論文は調査対象から除外されています。リカバリーカレッジ(RC)は、ほとんどの場合、教育機関でありメンタルヘルスサービスの中にはないことが理由とされました。

 筆者らの調査結果によれば、「ピアワーカー」は、ピアでない同僚と同じ機能を持つように期待される、従来のサービス提供場面において共同作業に従事するよう言われ、代替的な支援形態や活動を選択する選択肢は限られています。つまり、あらかじめ決められたサービスの提供者であり、「ピアワーカー」はサービス利用者のニーズに合わせてサービスを調整する機会が少なくなります。というのは、組織がピアワーカーの活動を定義しており、それは現行のサービス提供モデルを補完するものであるか「らです。そのことによってサービス利用者は「ピアワーカー」を組織の一員として認識し、信用がうすいかもしれません。「ピアワーカー」が支援者の延長線上に位置するということは、バウンダリー・スパナー(境界をとっぱらう人)としての可能性は生かされにくくなると思います。

 この調査では「ピアワーカー」は非ピアワーカーとともに働くことがほとんどであることが示されていますが、彼らがサービス関連の決定において同等の発言権力を持つことには障壁があることが示唆されています。同様に、研究では、精神保健の専門家が「ピアワーカー」の当事者性に利用者とのつながりやすさを利用して「ピアワーカー」を搾取し、精神保健の専門家が直接提案すればおそらく拒否するであろう治療法を患者に受け入れさせるリスクを指摘しています。それに応じて、「ピアワーカー」は病院の環境の中で次第に専門職をモデルとした立ち居振る舞いを始める可能性も指摘しています。

 弊法人との「サポートアウスとびら」は、そのような権力の偏りといった関係性から離れ、独立の部署として活動していますが、とびらのスタッフは最終的には法人から雇用される立場であり、力関係について何も思わないわけではありません。また、今日のメンタルヘルスシステムが抱える構造的な問題を、すべて従来のような「ピアサポート」の手法だけで解決していくわけにもいかないような気がします。

 現在、ケアセンターでは以前の方式でのデイケア活動をお休みしています。精神的困難を持つ人たちによる活動であるサポートハウスとはまた別の枠組みで、専門職もメンタルヘルスのサービス利用経験者もいて、相互に平らかで、境目のない新しいリカバリー志向の活動を行うにはどうしたらよいのかを対話を通じて模索しています。

 かつて住吉病院がアルコール依存症の治療について断酒会やAAの方々の存在を知って病院での新しい治療文化を作り上げたように、新しい活動が創造できたらいいな、と考えています。