Consumer Operated Services (COS)とは

 住吉偕成会では、精神的困難を経験したり、精神保健福祉サービスの利用経験のあるスタッフが働いています。が、私たちの中には「ピアサポーター」として仕事をしている人はいません。専門的な資格を持っている場合も、そうでない場合もありますが、みんなそれぞれのピアサポートを、自分の働き場所で周りの人との関係性の中で行っています。

 英語の Peer ピアという単語には「障がい者」とか「当事者」という意味はありません。「仲間」「対等の関係」という意味が辞書には載っています。Peer Support は仲間同士の(相互の)支援、という意味はありますが、障がい者によるサポート、という意味ではありません。たとえば、大学におけるピアサポート、とは「学生同士の相互サポート」なのです。「ピア」という概念が相手との関係性をもとにしているわけですから、「ピアの人」とか職業として「ピアサポートする人」という意味合いのピアサポーターはない、と私たちは考えています。

 メンタルヘルスの分野でいわゆる「ピアサポート」とは、「当事者」の意味ないし consumer 消費者、によるサービスという意味合いによってCOS Consumer Operated Survices とよばれています。

 COSは「精神的困難の経験により精神保健福祉サービス利用経験者たちによって計画され、運営され、管理され、評価されるサービス」ということになります。つまり、
– 関わるそれぞれの人は当事者であり、
– 管理や活動は精神保健サービスの提供組織から独立し、
– 当事者が理事会やスタッフ、予算をコントロールし、
– 当事者が参加するプログラム
するものということになります。

 これとは別に Consumer Partnership当事者パートナーシップというものがあり、これには
– 当事者によって提供されるサービス
– 当事者が参加するプログラム
– 当事者は自らが精神疾患を持つことを認める
– 非当事者と共通の運営や予算管理
– 非当事者と共同で行われる管理
が含まれます。

 また、Consumers as Employees 雇用されている当事者、というカテゴリーもあり、これには
– 自らを当事者と考え、指定された当事者の職業や従来の精神保健領域の
 職業で雇用された人たち
– 指定された当事者の職業:当事者活動の専門家、ケースマネジャーの補助、
 当事者権利擁護者、ピア・コンパニオンなど
– プロシューマー:当事者& 精神保健の専門家
が該当します。

 これらを前提に考えると、弊法人にはさまざまな立ち位置のConsumers as Employees のスタッフがおり、「サポートハウスとびら」はConsumer Partnership を出発点にしてCOSを目指している部署、と考えています。サポートハウスとびらは、運営スタッフはそれぞれ精神科サービス利用経験者であり、管理や活動は理事長の直轄部署として住吉病院ならびにリカバリーセンターすみよし、という精神医療福祉サービスの提供組織からは独立しています。運営はスタッフによっていますが、予算は法人によっており、ミーティングは当事者が参加するプログラムとなっていますので、COSとConsumer Partnership の中間の立ち位置のように私には見えています。

 今日、ようやくConsumers as Employees が精神保健分野で広がろうとしていますが、この方々をインクルージョン(個人の属性にとらわれず平等に機会が与えられ、一体感を持って働くこと)するということが、「同化(異なった背景の人が一般的な環境に溶け込むこと)」や「統合(メンタルヘルスシステムへの受け入れ)」の形によって進展していると考えられているのではないか、と批判する向きがあります。私たちはインクルージョンの環境は一方的に課せられるものではなく「互いに選びあうこと」であるものであると考えています。そしてこの相互性がピアサポートにつながっていることなのではないかと考えています。

 

 

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