寄せ書き

今月のはじめ、県内の障がい者施設で新型コロナウイルス感染症の集団発生が起こりました。

該当の法人様ではいち早くホームページで集団発生について公表され、素晴らしい対応と感じました。文章からは入所者の皆さまはもとより、法人スタッフの皆さまが連日懸命に災害に対して取り組んでおられることが伝わってきました。

発表の文章で私には気になる一節がありました。

「・・・結果的に多数の感染者を発生させたことを真摯に受け止め、深く反省し、より一層の感染予防対策の徹底に努めてまいります。」
「関係する皆様には心より深くお詫び申し上げます。」

1年半にも及ぶ目に見えないウィルスとの戦いの日々において、完璧をおえどもゼロリスクが果たせないことはありうることで、私どもの病院でも過日、入院数日前に総合病院を受診されてからご入院された方が、入院後に陽性反応が判明した事例がありました。現在当院では入院直後の患者様は感染症ありの前提で対応としていたことから幸いにして二次感染は避けましたが、先方の方々のご心労いかばかりかと感じた次第です(当院での経緯はホームページでご報告しております)。
そして、同じく障がいをお持ちの方とともにあることを生業とする一人として、苦労を続けながら誰に向かってかわからない先に首を垂れている仲間に何もお手伝いできないでいることを苦しく感じました。

私どもの法人では、感染症等の対応時になぜか院長が栄養ドリンクを配布するという伝統があり、個人的なこととしてドリンクを送らせていただきました。入所者の方は医療用消毒液が口に入ることも(勝手に)想定するという発案があり、事務長が厨房で使用するしつらえのアルコール液をお届けしました。それとともに、過日、山形県の病院様へマスク他を送らせていただいた時と同様に有志による寄せ書きも携えられました。

弊法人は災害派遣精神医療チームDPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)活動に参加しておりますので、山梨県から精神科病院協会を通して依頼されている支援活動に人員を向ける準備を開始しています。

わが国は、かつて、ハンセン氏病にかかられた方々やご家族に対して、マスメディアの誇張された情報やデマに惑わされ、限られた情報に基づいた「正義」によって差別・偏見が生じ、人々が分断されてきた歴史があります。今もなお精神的困難を得た方々と「健常」の人との間に横たわる分断は解消されたと言い切れないものがありますが、それと同じことが新型コロナ感染症の現場で起こっているのではないかと心を痛めています。

そしてさまざまな情報の中で、何が正しいかについての軸を持ちにくくなった今、「心のケア」の必要はすべての人に向けられなければならない状況となった、と私は感じています。

私たちの法人は、60年を超える精神保健福祉の実践の中で、病者や障がい者への差別には一貫して反対してきました。誰かを悪者にして排除する考えに加担することはありませんでした。困難に直面しながら、回復に向けて懸命に生きることを自らの課題としつつ、皆さまと一緒に実践を積んでいきたいと思います。

 

 

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。