ほのちゃんの成長記5/8

こぶみかんの新芽のほのちゃんは、ゴールデンウイーク中も休まずに、すくすくほのぼのと成長しています。連休前に新たな芽ばえがありましたが、休みをあけてみると、すっかり大きくなっていました。

ゴールデンウイークが明けて、政府は非常事態宣言をさらに延長することを決定しました。まだしばらく当院でも感染拡大防止のための取り組みを継続していく所存です。

私どもの病院では、スタッフは業務中にマスクを着用しています。また、患者様にも可能な場合にはマスクの着用をお願いしています。

マスクがウィルス感染を予防するかどうかについては、インフルエンザ発症者がマスクを着用することで家庭内感染を防ぐことが可能であるか検討したフランスでの調査があります。インフルエンザ診断テスト陽性となった患者さんのいるご家庭を対象として、マスク着用あり・なしの2群に分けてマスク着用群では発症者が他のご家族と同じ部屋や限られた空間(車の中など)にいる場合にマスクを着用することを5日間実施しました。
その結果、調査期間中に家族がインフルエンザ様症状を示した割合は、マスク着用群は16.2%、コントロール群は15.8%で有意差はなく、マスク着用における感染予防効果は認められなったとこの論文では結論付づけられており、病気にかかっていない人にはマスクは意味がないという意見の根拠となってきました。
Canini L, Andreoletti L, Ferrari P, et al.:
Surgical mask to prevent influenza transmission in households:a cluster randomized trial.
論文はこちらから→https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2984432/

近頃ランセットに掲載されたレヴューでは、サージカルマスクによる健常者の感染予防効果についての各国の対応はまちまちであるものの、総じてフェイスマスクは、呼吸器感染症の患者をケアする際の飛沫予防する効果はあると考えられていますが、一般社会での使用における効果は懐疑的とされています。このレヴューによれば、一般の場面でが健常である方についてマスク着用の身で感染予防効果を調査した報告は少なく、マスク着用による予防効果は明確でないとされています。そして感染予防の観点から、マスク着用で安心してしまって、手指衛生にマスク着用などを追加することなどの複合的な感染予防がおこなわれなくなることに危惧が表明されています。
Feng S,Shen C,Xia N,et.al.:Rational use of face masks in the COVID-19 pandemic.TheLANCET Volume 8,ISSUE 5,P434-436,mAY 01,2020
ランセットの論文はこちら→https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)30134-X/fulltext#coronavirusu-linkback-header

以前のアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の「パンデミックインフルエンザ予防のための地域社会伝播軽減ガイドライン」におけるマスクの位置づけは、咳やくしゃみによる大飛沫粒子をブロックすることにより、有症状者から健常者へインフルエンザウィルスの伝播を防ぐための物理的バリアであるとしており、有症状者のマスク着用については、パンデミック時において人が密集している公共施設を避けられない場合に、感染源の抑制措置として推奨する可能性があるとしているものの、ハイリスクではない健常者の日常的なマスク着用については、家または公共施設でのマスク着用を推奨していませんでした。
ただし家庭内でインフルエンザ症状を示す子供のケアなどをする人が患者との接触時にも感染防止の目的でマスクの着用をしてもよいとしていました。一方で、マスク着用は汚染した環境に接触した手で自分の鼻を触るなど、自分自身への接触を減らすかもしれないと述べており、同時に個人で行う対策として、手指衛生、咳エチケットの実施、インフルエンザ症状のある場合などの自主的な自宅待機などが推奨されていました。
ところが、今年の4月3日になり、CDCは新型コロナウィルスの拡散を防ぐ一環として、「医療用ではない布マスク」を市民が着用することを推奨しました。これまでの症状が出ている人だけにマスクの着用を勧めていた方針を変更し、強制ではないものの、体調が悪くない人にもマスクの着用を推奨するようになったということです。
CDCの発表はこちら
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/cloth-face-cover.html

つい最近、nature誌に、コロナウィルスについて、直接的にマスクのウィルス拡散予防効果を測定した論文が掲載されました。

Brief Communication
Published: 03 April 2020
Leung NHL,Chu DKW,Shiu EYC,et.al.:Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks.

呼気中の呼吸器ウイルス排出とフェイスマスクの有効性

急性呼吸器疾患の子供と大人の呼気中の季節性ヒトコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルスを特定し、それぞれウィルス量をサージカルマスクをつけた場合とそうでない場合に振り分けて定量化し、マスク着用の効果について検査した。データとしては、フェイスマスクなしで収集されたサンプルの3/10(30%)と4/10(40%)で呼吸飛沫とエアゾルでコロナウイルスをそれぞれ検出したが、マスク着用では呼気飛沫でもえあぞるでウイルスを検出しなかった。エアゾルでは統計的に優位(p=0.02)であり、呼吸飛沫では減少傾向を示した(p=0.07)。
インフルエンザウイルスについては、マスク着用で呼気飛沫中のウイルス検出は27分の1(4%)に有意に減少したが、エアゾルの検出は有意ではなかった。より直径の小さなライノウイルスの場合は、呼吸器液滴とエアゾルの両方で、マスクの有無によりウイルスの検出に有意差はなかった。

筆者からの結論:
・エアゾル感染がコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルスの
 潜在的な感染様式であることを示している。
・サージカルマスクが呼吸飛沫やえあぞるでコロナウイルスを減らすために有効
 性がある。
・このことはCOVID-19の制御にとって重要な意味を持ち、感染者がサージカル
 マスクを使用して、前方への感染を減らすことができることを示唆している。
・個人の感染性にはかなりの不均一性がある。
・30分間の呼気採取中に全く咳をしなかった少数の参加者でウイルスRNAを特
 定した。これは、明らかな兆候や症状のない個人からの飛沫およびエアゾルの
 感染経路が可能であることを示唆している。
nature誌の論文はこちら
https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2

これまでの日常的な感染予防効果の報告を総合すると、マスクは着用は手指衛生等の対策を組み合わせた複合的対策による有効性は報告されていますが、日常的なマスク着用のみで過信せず、感染対策の基本となる手指衛生等を併せて行うことが重要と思われます。
WHOは呼吸器症状がある場合、または症状のある人のケアをしている場合は、励行に加えて標準予防策に加えて、必要な場合には不フェイスマスクを着用する事を推奨しています。以上を踏まえ、さらにnature誌の報告も踏まえて、当院は医療機関であるので、院内感染防止の意味合いと、無症状感染者のスタッフが万が一いた場合に感染拡大を防止する意味合いをもってマスクを着用しています。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。