抗精神病薬によるQTc延長症候群
- 2017.04.09
- 日記
精神疾患をお持ちの方が突然死されることの原因のひとつとして、抗精神病薬によるQT時間延長というものがあります。QTとは心電図におけるQ波~T波までの時間ですが、抗精神病薬にはQTを延長させるものがあり、このことにより潜在的に突然死のリスクが高まると考えられています。QT延長により突然死が起こりうる理由としては、トルサー・ド・ポアン(torsades de pointes)という重度な不整脈が起こり心室細動に至ることがあるためとされています。
QT時間は心拍数に影響されるため、通常は心拍数に関する補正をかけたQT間隔(QT corrected foe heart rate:QTc)が数値として採用されています。通常は、QTc440msec以上をQT延長といい、500msec以上の延長は臨床的に危険とされています。QTのわずかな延長の臨床的意義はまだよくわかっていませんが、抗精神病薬と併用薬の相互作用でQT延長の副作用が強く出る場合があるといわれています。注意を要すのは精神科薬以外では抗真菌薬(イトリソールなど)や抗ヒスタミン薬、抗HIV薬、マクロライド系抗生物質などとされています。
イギリスのモーズレイ処方ガイドライン12版では「QTcに対する抗精神病薬の作用」の項目で以下のように記載されています。ガイドラインはこちらで公開されています→
https://archive.org/details/TheMaudsleyPrescribingGuidelinesInPsychiatry12thEdition
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QTcに対する抗精神病薬の作用
報告なし:アリピプラゾール・ルラシドン
過量投与のみで重度のQTc延長が報告されているか、臨床用量で(<10msec)が観察されている:アセナピン・クロザピン・フルフェナジン・フルペンチキソール・ペルフェナジン・プロクロルペラジン・オランザピン・パリペリドン・リスペリドン・スルピリド
通常臨床用量で平均>10msecのQTc延長が認められるか、特定の状況で心電図のモニタリングが公式に推奨されている:アミスルピリド・クロルプロマジン・ハロペリドール・イロペリドン・レボメプロマジン・メルペロン・クエチアピン・ジプラシドン
通常臨床用量で>20msecの著明なQTc延長が認められる薬剤:抗精神病薬の静注剤すべて・ピモジド・セルチンドール・推奨された用量を超える投薬
作用不明:ロキサピン・トリフルオペラジン・ピポチアジン・ズクロペンチキソール
ただし、これはおよそのものであり、QT間隔に対する抗精神病薬の作用の差については、メタ解析ですらほとんど統計学的有意差が認められていないことに留意すべきである。
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ガイドラインでは、入院時に心電図をモニターすること、過去に異常があったりリスク要因が増えた場合には年1回は定期的検診時にチェックすることと記載されています。処方追加の際などにもフォローは必要と考えます。なお、個人的には、発売後の期間が短い薬剤については副作用報告の蓄積が少ない可能性についても留意しておくことが好ましいと考えます。
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
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