統合失調症患者における死亡率と突然死についての検討
- 2016.06.29
- 日記
五十嵐 桂 藤井 康男他:統合失調症患者における死亡率と突然死についての検討。臨床精神薬理19(07):1003-1014,2016を読みました。
同じ地域にある公立の精神科病院のデータです。この病院で1年間になんらかの診療を行った統合失調症圏の患者様1,367例のうち、期間中の死亡者は22例でした。うちわけは病死などの自然死19例、自殺3例で、自然死の中で14例は原因不明の突然の死亡で、これを広義の突然死群としましたが、その中でさらにICD-10による厳密な定義による突然死は9例でした。
広義の突然死14例とこれと年齢,性別をマッチさせた対照群140例について解析したところ、突然死群は対照群に比べて
・抗精神病薬総投与量
・抗精神病薬/ベンゾジアゼピン系薬剤の数
・喫煙率
の数値が有意に多く、ロジスティック回帰分析を行った結果は
・抗精神病薬総投与量
・ベンゾジアゼピン系薬剤数
が多いことは広義の突然死のリスクを高める要因である可能が認められました。論文中では、突然死で亡くなられた方においてCP換算の平均値が1000mg/日に近いことが示されていました。
私たちが海外の研究と自身らの臨床経験から学んで長年取り組んでいる、抗精神病薬投与量の減量と抗不安薬/睡眠薬の漸減中止、そして断煙の試みがいずれも病いを持つ方々の健康増進に寄与するものであることがご近所の病院のデータからも裏付けされたこととなり、勇気づけられました。
抄録は星和書店のホームページから月刊「臨床精神薬理」に入り
→http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0103/bn/19/07.html
の「原著論文」のところで読むことができます。
最後までお読みいただい方、どうもありがとうございました。
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