島根県精神保健福祉大会講演「働いて元気になる!」前編

先月、同僚と島根県精神保健福祉会連合会さまにお招きを受けて第47回島根県精神保健福祉大会にて、特別講演をさせていただきました。皆さまにとても喜んでいただきましたが、特に同僚の話は私にとっても心を動かされるものでした。今回、講演原稿をブログ用に改変してもらいましたので、皆さまにもお読みいただきたと思います。

 ここからは私の話をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 私は実は統合失調症です。しかし、これは私のどの部分を語るものなのでしょうか。名前でもなければ性格でもありません。もちろん、私の職業でもありません。私の何を物語っているのか、何を証明しているのか、表現しているのか。診断名というのは私にとって非常に不本意なラベルなのです。

 私は、自分が初めて入院した時には、この世の終わりとでも言うように絶望に打ちひしがれていたものです。この頃の私は回復なんて言葉は知りませんでした。しかし今では、私自身がリカバリーを信じられるようになってきました。他人のも、自分のも。そして未だ会ったことのない人々のリカバリーも。きっと、やればできるんだ。そう思えるようになりました。

 私は現在、住吉病院で尊敬するキャリアコンサルタントから多くの事を教わりながら、共に就労支援をしています。仕事を探す前には、もはや障害のあるなしは関係なくて、全員が「求職者」になります。障害者へ向けた専用の求人もある中で、私どもを訪ねて来られる方々の中には、障害者手帳を持たない方はもちろん、一般求人で仕事を探す方が大勢います。一般求人で、何が悪いのか。私はこう思うのですが、皆さんはどう思われますか。また、働きたい場所で、働きたい人と、働きたい時に働けるように。私はこれを大切にしています。働きたい時というのはタイミングのことです。私はその方の働き始める、始めたいという「タイミング」を逃したくないと考えています。思い立ったが吉日、ですから。私のする「応援」には、その人のバックグラウンドは関係ありません。その人がどんな病気にかかり、どんな環境の中で生きてきたのだとしても、私はその人がその人らしい人生を送るのに全力で添っていく。私は神様ではないし、病気を治してあげることも、過去を癒してあげることもできません。何の力もないのです。でもだからこそ、その人の傍らにいて、寄り添って、本当に進みたい道を一緒に探して行ける。私はそう信じています。
 
 この手で何ができるだろう。そんなことを、傷つけた赤い手首の先の未来を、私は学生時代に思い巡らせていました。悩んできた時間、悩み抜いたことの全てが私を象り、今では少なからずこれに色がつきました。それから年月を経て、私は「働く」という新たな希望に出会います。それまで自分の内面にしか向けていられなかった視線は、あまりに素晴らしい人たちとの出会いから、そちらに目を向けずにはいられなくなったのでした。働き輝く人たちに出会い、私はいつかこの人たちのようになりたいと目標を持つようになりました。そうして鼓舞され、動機となり、働く道を選びました。働くうちに、どんどん希望も湧いてきました。夢も見つかりました。持てるようになりました。こうして私はどんどん人間らしさを取り戻し始めました。表情も感性も豊かになって、戻ってきたように感じています。出会いは私に起こる奇跡です。昔も今も、それは変わりません。

 今日私は、皆さんとこうしてお会いすることができました。一度や二度じゃない、消えてしまいたいと思ったあの時を越えて、今、私は皆さんとお会いすることができた幸福を噛みしめています。

 私は、「人の役に立ちたい」とこれまで願ってきました。しかし、どうしたら人の役に立てるのかわからずにいました。もしかしてこれから先もずっとずっと続いていくテーマなのかもしれないと思っています。

(続く)

最後までお読みいただいた方、あrがとうございました。