統合失調症の再発・薬物療法と脳容積

Andreasen NC,Liu D,Ziebell S,et.al.:Relapse Duration,Treatment Intensity,and Brain Tissues Loss in Schizophrenia:A Prospective Logitudinal MRI Study.Am J Psychiatry 2013;170:609-615
を読みました。

客観的で長期的な脳のMRI研究では、統合失調症をお持ちの方は発症後、進行性に脳組織を損失していると指摘されています。再発を繰り返すことが脳組織の損失に一役担うと考えられていますが、Andreasenらは、今回継時的なデータを分析しました。
分析対象となったのは初発の統合失調症者に関するアイオワ長期研究における202例の患者のデータだそうです。
結果としては、再発期間の長さは、全体的・局所的な脳容積の有意の減少に関連がありました。再発の回数は、脳容積の減少とは無関係でした。そして薬物療法の強度も脳容積減少に有意に関係があったそうです。著者らは結論として、再発期間の長期化は統合失調症をお持ちの方の脳の健全性にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、再発を防止し治療アドヒアランスを改善する必要があるとしています。

それとともに統合失調症の薬物療法による再発防止は重要であるが、それは、症状をコントロールする可能な限り低い用量を使用することで支えられることが望ましいと考えています。

このデータを考えてみると「再発してはいけない」ということは重要ですが、それが再発回避がその人の人生において一番大切かどうかは個人の状況によって異なるかも知れず、ときにリスクをとりつつチャレンジを行うという選択権は排除されないこと、そして再発時のリスクを低減をあらかじめ準備していくことの必要性も感じられました。

維持期における薬物療法の低減化のためには、症状の自己管理のための心理社会療法的アプローチ、たとえばIMR(Illness Management and Recovery)プログラムや認知矯正療法「リハビリテーションに対する神経心理学的な教育的アプローチ」NEAR(Neuropsychological Educational Approach to Rehabilitation)、また、SAHMSAによりエビデンスがあるとされるWRAP(Wellness Recovery Action Plan)のようなセルフヘルプ的アプローチの利用、就労支援のような本人の目指す方向性に即した支援を、それぞれの人に対して個別の支援を行うことが必要に思われます。


アブストラクトはこちらで読むことができます→http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleID=1676090

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。