くすりにたよらない精神医学

井原裕・松本俊彦・よくしゃべる精神科医の会編「こころの科学増刊・くすりにたよらない精神医学」日本評論社http://www.nippyo.co.jp/book/6355.html

精神科は安易にくすりを出しすぎではないか、という昨今のムーヴメントに応じた、くすり漬けの精神科医療を脱し、よりよい医師・患者・援助職のあり方を探ることを眼目にした一冊です。

本書内容は多くの書き手によって成り立っています。冒頭は、編者のおひとり・井原裕先生とユーザーの方の対談からはじまります。

くすりにたよっていた時代をふりかえる
ドラッグ・フリー・ライフのために
そして、そのあとにいろいろな立場の方が書いておられます。私の存じ上げる方のお名前も見つけられました。
▼ユーザーの願い・コメディカルの思い
▼くすり漬け化する精神医学
▼くすりにたよらない治療
▼他科から考える
私どもの病院では、精神科認定薬剤師による服薬管理指導業務を通じて、1日一人当たりの平均向精神薬投与量が2007年11月→2013年6月にかけて

 抗精神病薬投与量(クロルプロマジン換算)674.5mg→566.7mg
 抗パーキンソン薬投与量(ビペリデン換算)1.72mg→0.86mg
 抗不安薬・睡眠薬投与量(ジアゼパム換算)8.05mg→2.99mg

と推移してきました。それでも、ご入院される方についても処方薬が複雑化されている方、在院長期にわたり高用量を服用されていた方の処方減量には時間がかかることを感じており、取り組みは今後も粘り強く、長く継続することが重要であると感じています。そのような中で、多剤大量療法や処方薬依存の問題に関しては、医師のみではなく、薬剤師・看護師・作業療法士などのスタッフや、さらには薬物療法をご利用されるユーザーの方とも協働していく必要性を痛感しており、この本の内容には大いにうなづかされるものばかりでした。

現場で薬物療法を行っている、医師・コメディカル・支援の立場の方・そしてご本人、ご家族の方々、多くの方々に読んでいただきたい、と思いました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。