サッカーは統合失調症への付加治療として有効である

Battaglia G, Alesi M, Inguglia M, et.al.:Soccer practice as an add-on treatment in the management of individuals with a diagnosis of schizophrenia.Neuropsychiatr Dis Treat. 2013;9:595-603.を読みました。

近年、重い精神的な病をお持ちの人々の健康を増進するツールとしてサッカーを用いることが注目されてきたそうです。
この研究の目的は、精神病をもつ人における自己申告による健康生活の質(SRHQL)と
スポーツの成績(SP)に関してサッカートレーニングの効果を調査することです。統合失調症の診断をもつ18人の男性が訓練群(TG)か対照群(CG)にランダムに振り分けられました。TGは、週当たり2回のサッカー・トレーニング・セッションに12週間参加しました。CGは、実験的な期間の間にいかなる定期的なスポーツ活動も行いませんでした。身体状況の測定、SRHQL、30メートルの短距離競走試験の個人時間記録とドリブルをしながらのスラローム試験は、試験参加の前後で評価されました。SRHQLは、肉体的および精神的な構成要素を要約して表すスコアを12項目のアンケートを使用して評価されました。


トレーニング後、訓練群はベースラインと比較して体重(BW)とボディーマスインデックスの減少を示しましたが、対照群は、反対に、有意にBWを増加させました。SRHQLでは、トレーニング後にトレーニング群が身体的構成要素概要でも精神的構成要素概要でも10%程度の改善をみました。さらに、トレーニング群は対照群と比較して、30メートルの短距離競走試験とスラロームの成績が有意に改善されました。
したがって、本研究では、プログラムされたサッカートレーニングが抗精神病の薬物関連の
体重増加を減らすことができて、精神的な病いをお持ちの方のSRHQLとスポーツ成績を改善することができることにより、サッカートレーニングが統合失調症の診断を持つ人の心理・物理
的健康を増進することが証明されたと結論しています。

ちなみに、この研究でのトレーニングモデルは1回100~120分で、
・日誌へのサイン(10分)
・トレーニングの説明(10分)
・ウォームアップ(20分)
・トレーニング(40~60分)
・クールダウン(10分)
・振り返り(10分)
となっていました。

アトムズ甲府のプレイヤーを見ていても、フットボールの有用性は私にとり疑いのないものに感じられますが、治療の一部としての有用性が研究されていたとは驚きでした。プレーをしているとき、メンバーはほとんど「症状」がないように見えていたりします。診断を持っている人がいつも病気であるというわけではないということがわかります。そして、多くの人はプレイ中には病気としての経験が気にならなという話しを聞きます。
これはサッカーが治療であることの裏付けですが、それは医療やリハビリテーションと
いった狭い範囲における介入技法によるものではなく、病があっても排除されないことやお互いに信頼し合って活動し、社会との一体性によっておこってくるものと私は考えています。というのは、集団スポーツであるフットボールは、それぞれのメンバーが活動を通じて自分の役割を果たし、社会に参加することを助けていると思われるからです。

ボールは誰にとっても丸く、限界を決められないで転がっていくことができるのだと、さまざまな大会に顔を出してつくづくと感じています。

ここでお知らせです。私がサポーター会員となっているアトムズ甲府は、ヴァンフォーレ甲府や多くのスポンサーの方に支えられて、先日の中部北信越ブロック大会で優勝し、この秋に行われる精神障がい者フットサル全国大会に進出することができました!

これまでのご支援へのメンバーたちからの感謝をお伝えしますとともに、全国制覇の期待を受けてトレーニングをしているアトムズ甲府に、皆さまのますますのご支援をお願いいたします。
※アトムズ甲府の公式ブログはこちらです→
http://atomskofu.blogspot.jp/

Battegliaらの論文の抄録はPubMedで見ることができます→http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23662058


最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。