統合失調症治療におけるベンゾジアゼピン@コクラン・レヴュー
- 2013.03.14
- 日記
統合失調症の薬物療法において、ベンゾジアゼピンの使用については、漫然投与の危険性と急性期投与の有効性について議論されてきたところです。
Cochrane Library では2012年11月14日、統合失調症あるいは統合失調症様精神病に対するベンゾジアゼピンの有効性と安全性に関する34試験・2657例についてのシステマティックレビューを行った結果を公表しました。
Cochrane Database Syst Rev. 2012 Nov 14;11:CD006391. doi: 10.1002/14651858.CD006391.pub2.
Dold M, Li C, Tardy M, Khorsand V, Gillies D, Leucht S.:Benzodiazepines for schizophrenia.
主要な結果は以下の通りです:
・プラセボと比較したベンゾジアゼピン単独療法に関する試験は8試験であったが、臨床的に主要な
反応を示さない者の率には有意差は認められなかった。
・抗精神病薬単独療法とベンゾジアゼピン単独療法とを比較した試験は14試験であったが、主要
臨床効果の評価において、統計的に有意な差がみられた試験グループはなかった。
・抗精神病薬群と比べてベンゾジアゼピン群のほうが、20分、40分の時点で適切な鎮静を得た参加
者が有意に多かった。全身状態・精神状態や副作用については有意差は確認なかった。
・抗精神病薬+ベンゾジアゼピン併用療法と抗精神病薬の単剤療法との比較試験20試験において、
主要臨床的効果で併用療法が統計的に有意差を持って改善をもたらしたのは最初の30分のみで
あった。
・30分と60分においては望ましい鎮静をのぞく全身状態と精神状態には有意差がなかった。
著者の結論:
・現時点において、統合失調症もしくは統合失調症様の精神病の薬物治療においてはベンゾジア
ゼピン単独治療ないし抗精神病薬とベンゾジアゼピンの併用療法の有効性の相違を確認する
ことにおいても反論することにおいても、明確なエビデンスはない。
・ベンゾジアゼピンは非常に短時間における鎮静に有効であるされるエビデンスは質が低いが、
興奮している患者を落ち着かせる場合には考慮することができる。
・全般的な脱落率で評価するとベンゾジアゼピン治療の受容性は妥当に見える。副作用は一般的
にあまり報告されていない。
・統合失調症におけるベンゾジアゼピン治療、とくに長期間の併用療法に関するエビデンスを明らか
にするために、多くの患者を用いた質の高い将来の研究が必要である。
ここからは個人的な見解ですが、ベンゾジアゼピンを統合失調症圏の診断を持つ方の治療に使用する効果が治療初期の期間のみであることは実際の経験にも合致しています。私はベンゾジアゼピンの離脱の難しさを考えたときに、ルーチンに統合失調症治療に用いることには慎重であるべきと考えています。一方で、レヴューやガイドラインでは、興奮している統合失調症圏の診断を持つ方の治療において、初期鎮静には抗精神病薬のみを使用する方法のみではないことも明示されています。どちらの考え方も現時点ではエビデンスのレベルでは決着していないということだと思いますので、臨床経験の積み重ねは重視されるところと思われます。
※アブストラクトはこちらで読むことができます→http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23152236
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。