J1リーグ2011シーズン開幕・甲府が捨てたもの

快晴の日、春の陽気に誘われて、サッカーJリーグディビジョン1が開幕しました。

チケットはソールドアウト!15,000人を超えるサポーターで山梨中銀スタジアム(小瀬競技場のネーミングライツを山梨中央銀行がお買い上げくださいました)は埋まりました。スタジアムで法人スタッフに出会いましたが、互いに今シーズンへの期待で笑顔で挨拶をしました。

試合前から両軍サポーターの熱気に、「J1なんだぁ~」と実感がわきました。そうして試合は始まりました。甲府は今年から監督が三浦俊也に代わりました。大宮や神戸でのチーム作りを見たことがありますが、まさか甲府で4枚2列のラインを引くとは、びっくりでした。選手が自分のナワバリを死守して出て行かないような試合になったらどうしよう、と思っていましたが、エスパルスから移籍した伊東テル選手は素晴らしい読みで中盤の底で守備を機能させ、つなぎにも力を発揮するという、かつての林健太郎選手のような役割をとっていました。例年チームの仕上がりの遅いジュビロということもあり、前からのプレスが効いた前半は松橋選手の惜しい2本のシュートもあって、なによりラインを高く保つことができ、単調な中にもポリシーを感じるものでした。

ただ、ジュビロは前半様子見で後半に相手にあわせて修正してくるタイプのチームだったので注意していたところが、後半に入って不安定な左サイドの2人をあまり動かないように修正して松橋に代えてまだフィットしていないだろうフジネイを投入。もともとのポジションではない起用であり、身長を期待しての前線起用だったかもしれませんが、ここから前線と守備の距離が大きくなり、押し込まれて大きくクリアするところをマイクがせりあうような「縦ポン」といわれるサッカーになってしまいました。そして攻守のバランスが崩れた甲府は後半、コーナーキックの連続からついに決勝ゴールを許してしまいました。
たしかに、大崩れはしなかった試合に見えます。ただ、なにか機械的というか、戦術とフィジカルからプログラムを書いた無機質なものを見せられたような違和感を感じながら、私はスタジアムを後にしました。連動感よりも規律・決めごとを優先するサッカーに対する長年の「飲み込めなさ感」を感じていたのかもしれません。もちろんプロのクラブとしては「楽しいパスサッカー」より「堅守速攻」「J1残留・定着」が優先することは理解しています。かつての甲府はショートパスを多用してJ1にその名を知らしめましたが、今シーズン、そのような闘い方は手放すのだと感じました。クラブの目指す理念のため、どのような戦術を採用するのかは、結果の責任を負わされる監督の権限であることも当然でしょう。ただ、いくら戦術・理念は素晴らしくても、それを実行するのは人間です。そこには温かみや信頼や助け合いが必要ですが、それを育てるのは地道なコミュニケーションが不可欠だと思います。

新しい監督を得て、何かを捨てた甲府。持っていたものを捨てて開いたその手で、新しい宝をつかんでもらいたいと願っています。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。