心の理論と統合失調症
- 2010.07.18
- 日記
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統合失調症の社会的な転帰は、陽性症状や陰性症状だけではなく、(神経)認知機能と関連が強いといわれています。しかし、遂行機能、ワーキングメモリ、言語記憶、注意・集中、言語流暢性、精神処理速度といった認知機能だけですべてが説明されるわけではないと思われます。
認知機能にはこれらのほかに社会認知(社会脳)という概念があります。社会認知では「他人の考えを推論する」「他の人の考えが自分と違っていることを理解する」という”心の理論”が重要視されています。
個人的には、自分が体験した事象をどのように解釈・意味づけるかについて、状況を吟味する余地が極端に狭くなるという「妄想(的信念)」を生じる結論過程の偏り・ゆがみという意味合いでの”JJTC:Jumping to conclusions ”と心の理論がどう関係しているかをもっとよく知りたいと思っています。
脳構造としては、統合失調症における変化は、左右の海馬と左上側頭回で中程度、その他の領域では軽度に認められるとされていますが、心の理論の脳神経基盤としては内側前頭前野皮質と上側頭溝があげられています。これらの部位の連関は現在研究されているところかと思います。
また、最近はこういった認知機能へのリハビリテーションについても知見が積みかさなってきており、たとえば認知強化療法(Cognitive Enhancement Therapy;CET)を2年間行うと、一般的な治療と比較して有意に認知機能と社会機能が改善するという無作為対照化試験による報告があります。
(Eack SM, Greenwald DP, Hogarty SS et.al.:Cognitive Enhancement Therapy for Early-Course Schizophrenia: Effects of a Two-Year Randomized Controlled Trial.Psychiatric Services 60: 1468-1476, 2009)。
病いを得たとしても社会で生き生きと生活できるようになる事を応援するには、薬物療法も社会への啓蒙も、生活での工夫も重要ですが、とりわけ薬物療法のみには頼らない治療としての心理社会的療法・リハビリテーションが注目されてきています。また、治療とは別のものとしてのピアサポートの重要性も明らかになってきていると思います。
日本統合失調症学会のホームページはこちらです→http://square.umin.ac.jp/jssr05/
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
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