スティグマに対抗する

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弊法人では、今年度も定期的に院長講義をやっています。今年度は疾患論の前に総論をお話しする構成になっています。先日は「リカバリーとは何か」をやりましたが、今回はスティグマについての講義をしてみました。

スティグマとは「身体的・精神的・社会的な価値を剥奪する属性。社会から受け入れられる資格を奪われている人の状況」ということになります。「望ましくない」とか「汚らわしい」として、他人からの蔑視と不信を受けるような属性(マイナスイメージ)であるともいえます。この定義をしたErving Goffman:Stigma, Notes on the Management of Spoiled Identity(1963)よれば、「スティグマ」という言葉で本当に必要なのは、属性ではなく関係を表現する言葉だということを知ることだそうです。


 

   

スティグマは、外部の者から排除されるという体験ばかりではなく、差別をされている人々が自らを差別することの苦しさもあることを知る必要があります。

精神障害者者が体験するスティグマには他者から stigmatize される体験があります
   マスメディア の差別的表現 、職場、学校、医療現場
     言葉による差別を受ける(57%), 身体的な差別(43%)  Dinos et al.2004          

   法律・制度から生じる stigma
     三障害での制度充実の格差、欠格条項(~1998)
   当事者自身が抱く stigma
       内なるスティグマ Internalized stigma/セルフスティグマ  Self-stigma
   他者からや制度等でのstigma体験
   診断名そのもの、服薬する時、自身が失敗した時 などがあげられます。

私たちは、精神障がいをお持ちの方やそのご家族に心理教育というサービスを提供していますが、その中で脆弱性(ぜいじゃくせい:vulnerability=病いになりやすい)に触れることがあります。この特性をどう伝えるかに配慮が必要なようにも思いました。また、セルフスティグマをもっとも強めるのは社会的孤立であるとされている(Lysaker et al. 2008)ことや、比較的短いスティグマ払拭を目的とした心理教育によってself-stigmaの軽減と自尊感情の改善を認めた(Maccines & Lewis 2008)ことなどから、私たち支援の立場をする者からでも、何らかのサポートをできる可能性もありそうです。

一方で、Stigma Resistance “スティグマ抵抗性”  (Sibitz 2009 Schizoph Bull) という概念があり、これは自尊感情、エンパワメント、QOLと正の相関を示し、抑うつと負の相関を示すそうです。これは多くの友人とのネットワークの存在と、治療の継続が関与し、重症度とは関係しないということであり、“社会のstigmaやstereotypeを否定できること”や“病気があってもやっていけるという信念”といった表現になるようです。

スティグマを自らの手ではがす、という過程はリカバリーの一つの側面かもしれず、スティグマを減らす/なくすことへのアプローチは私たちみんなが考えなくてはならないものと考えています。

※多くのご教示をいただいた福岡国際医療福祉学院・原口健三先生、久留米大学精神医学講座・内野
俊郎先生に厚くお礼申し上げます。


最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。