クラブハウスとパートナーシップについて考える

「リカバリー」をキーワードにする人たちと語り合う機会を得ました。いろいろなお話をさせていただき、楽しいひとときを過ごしましたが、クラブハウスとパートナーシップについて触発されましたので、熱が冷めないうちに書いておこうと思いました。

アメリカでは1970年代に脱施設化の結果として生まれた社会的リハビリテーションのモデルとしてビレッジ(ロングビーチ)やファウンテンハウス(ニューヨーク)が作られ、その理念が実践され提唱されてきました。これらの活動形態には、精神的困難を経験した本人も「場」を支える活動に種々の形において参画し、地域生活支援や職業リハビリテーションを展開している点が共通しています。

一方で、ビレッジとファウンテンハウスのようなクラブハウスモデルにはパートナーシップなどの観点で違いがあるとも言われているようです。

ビレッジでは、スタッフは利用者の個別ニーズに対して柔軟なサービス提供を行いますが、「利用者とスタッフは人間としては対等であるものの、完全に平等なのではない」という立場をとっています。つまり、利用者は自分自身の専門家として自分の人生に対する責任を持つ一方で、スタッフは専門性の高い良質なサービスを提供する責任を持つという点が強調されているようです。もちろん、社会でのリハビリテーションを効果的に行っていくためには、おのおのの責任とともに、スタッフと利用者との信頼関係が土台として必要不可欠であることは言うまでもありません。

ビレッジは普通の社会の中での生活を重視しますが、クラブハウスはその運営における活動にも重きを置いているようにみえます。また、ビレッジでは利用者とスタッフの間にはサービス契約があり、運営管理責任はスタッフが有しています。その一方で、クラブハウスモデルに関しては、参加者を規制する制約は設けず、運営上の責任はメンバーとスタッフが分担するとされています。


日本においては、現在までのところ、精神的困難を経験した人たちの「居場所」は地域社会と切り離された特別な居場所が用意され続けていていたかもしれません。それはデイケアであったり地域生活支援センターなどの福祉施設であったのかもしれません。そして今、リカバリー志向の実践でもあるACT、IPS援助付き雇用やクラブハウスモデルの特徴的プログラムである過渡的雇用はそのような人たちが「リアルな社会に再び参加しリカバリーしていくこと」の一つの試みのように思えます。


それとは別に、クラブハウスモデルの特徴的なことの一つである「スタッフとメンバーは対等な存在としてことにあたる」について、多くの支援者は研修や講演会で知識を得てきたものの、我が国で国際基準に合致したクラブハウスモデルを実践しているのは数か所でしかないこともあって、多くのリカバリーを信じるにいたった人たちに共有されている「百聞は一見にしかずの機会を得る」ことが少ないのかもしれません。「スタッフとメンバーの対等性」という社会的リハビリテーションにおける大切な視点は、様々な背景の人が様々な立場で実践され経験されていることの中から学びを積み重ねることによって、磨かれ、理念として一人ひとりのこころに真に落ちていくのかもしれないと思いました。

”かたちにとらわれず、その時その時に一緒に考える”という言葉をもう一度大切に考えたいと思いました。



最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。