働くこととリカバリーの温故知新

久々に英語論文を読みました。以下、アブストラクトの超超訳です。

平均32ヶ月間の地区精神病院への30歳以下の男性患者の入院の連続観察を行った。臨床的な研究であったので、対象数は正確な統計的な処理のために、または、2つ以上の要因の組み合わせ効果を調べるためには必要以上に小さかった。にもかかわらず、今回の所見は若い統合失調症患者の今後の研究の必要性を指摘するために、他の研究とおおむね一致する。

パート1の研究において示されたこと:
(a)思わしくない家庭状況と(b)長期にわたる失業期間の存在は、患者が長期間にわたる入院を予示するかもしれない。

一方では、たとえ家庭の状況が好ましくないとしても病院治療と、定期的な仕事習慣を確立する能力が協調して行われることは外界で良好な社会復帰に順調につながるかもしれないのであるから、やや長い入院が予後不良を必ずしも表すというわけではない。

研究のパート2においては、退院後の患者の就労能力は、多様な個人のおよび社会的因子に関係していると考えられた。

1.統合失調症でも非統合失調症のグループにおいても、彼らが退院していた時間の75パーセント以上働いた患者の大多数は、彼らの入院の前にもまた優れた就労経験を持っていた。

2.双方のグループにおいて、フォローアップ期間に健康でいるように見えた患者の大多数は、退院後に優れた就労結果を持っていた。

3.双方のグループにおいて、優れた就労結果を維持した大部分の患者は、仕事を退院後1ヶ月以内に始めた。

4.統合失調症者は、自分のもともとの仕事に復帰したとき、もしくは入院中に仕事が個別にアレンジされたときに、最も安定して働いた。これは非統合失調症の患者にあてはまらなかった。それは、彼らは自ら仕事を探すことがより容易にできた。

5.両親の元に戻った統合失調症患者の就労成績は、他の親族に、または、単身アパートに行った者のそれより悪かった。

この差は、疾患の重症度または慢性度に関係がなかった。不安定な家族関係と親族の精神疾患は、統合失調症のグループにおいて悪い就労結果と関係していた。

これらの所見は、疾患の発症前の労働習慣の安定性と健康の度合いが地域における統合失調症患者の就労能力に関与する一方で、退院後の社会的援助が同様に重要なことを示唆する。

これらのサポートの一つはリハビリテーションから就労までのスピードとスムーズさ、患者の人生における現実的な期待、そして持続的な未解決の感情的葛藤が合理的に解消されることである。

この論文、実は今から30年以上前の論文です。まさしく「温故知新」。私たちは先人の確かな観察で得られた知見をもう一度振り返る必要があるかもしれません。

Goldberg,EM:Hospital Work and Family : A Four Year Study of Young Mental Hospital Patients. Br J Psychiatry (1966) 112: 177-196.

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。



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(wrote:財団法人 住吉病院