EBACサイクル

統合失調症のような精神疾患において、幻覚や妄想といった精神病症状の体験は、不適応的な信念につながり、誤った信念に基づいて行動した結果、確信が高まったり反証を得ることに失敗して症状がより強固になります。これは体験―信念―行動―確証サイクル(Experience-Belief-Action-Confirmation cycle: EBACサイクル)と呼ばれています。

例えば、妄想は対人関係での困難を引き起こしたり、社会的な孤立を生じさせます。孤立や不安は精神症状を出現させたり、悪化させたりするストレッサーでもあります。また、対人関係における衝突は被害妄想の「証拠」として受け取られることが多く、社会との断絶は妄想的信念の真偽を確認するための機会を減たして妄想をより強固に信じたり、確証的反すうを通じて怒りを強めたりすることにつながるといわれます。幻聴や妄想を真実性の高いものと解釈してしまうことによって、誤った信念に基づいた実際の行動が生まれ、現実を評価する際においても、証拠を集めたり評価することが少なくなって、内的な体験から外部情報を直結的に評価する確認バイアスに至ると考えられます。

例えば、自分を脅かす声が聞こえてくる場合は:

体験:声が聞こえる

信念:攻撃されるというおそれ

行動:怒鳴り返す

確証:(実際には襲われないので)、怒鳴り返したから襲撃を逃れたという信念が強化され、やはり脅しが実在するという確信に至る。

これらを明らかにすることによって、幻覚や妄想への対処戦略を一緒に考えるようにうながし、病的な認知を改善しようとすることができるといわれています。重要なのは、それまでの対処法もその人なりの努力の結果であり、結果として感じる苦痛を問題として取り上げ、その苦痛を減らすための協働作業としての認知行動療法に参加してもらうことが必要になります。

イギリスにおける統合失調症に対する認知行動療法はこちらをご参照ください→http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/kousei/h17houkoku/haken/kikuchi_1.html

「冷静に考える」と、さまざまな工夫が見えてくるということかもしれません。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。

財団法人 住吉病院の求人情報はこちら

(wrote:財団法人 住吉病院