背番号15
- 2009.03.02
- 日記
寒い雨の降りしきる、夕方のピッチに背番号15は立っていた。自分では納得していない控えチームでのスタメン出場だった。
相手はトップチームで大学生。背番号15はまだ高校生だが、推薦で入学の決まっていた大学のクラブでもうトレーニングをし、控えに入っていたのだった。名のある推薦組の中にはトップに合流している者もいた。試合は開始から自軍の劣勢で推移していたが、前半20分頃に背番号15はロングボールに反応してドリブル突破。ディフェンスのタックルを交わして放ったシュートはGKの手を弾き飛ばしてゴールマウスに吸い込まれた。
相手はすかさず2点を入れて、自軍はますます劣勢となった。ワントップでプレスに走り回っていた背番号15は40分頃にドリブルで相手ディフェンス1人を抜き、スライディングに来たもう一人を切り返しで葬り、そしてGKのダイブをあざ笑うかように左足でコロコロと2点目を決めた。しかし、その後また相手はゴールを決めて前半が終わった。
後半に入ってすっかり日も暮れた中で、やはり背番号15は走り回っていた。劣勢はますます深まり、ボールもつながらず、ひたすらプレッシングをかけてチャンスを狙った。今度はもらったパスをさばくことが減り、ドリブル突破をチャレンジしまくった。遠くから見ていても「ハットトリック」をひたすら目指しているのはあきらかだった。そして後半もあと残りわずかというとき、ようやく通った味方のパスをDFを背負いながらヒールでトラップして反転、左足で振りぬいたシュートはネットに突き刺さった!
…かにみえたが、サイドネットだった。
そして試合は大敗で終わった。
「いつでもどんなところでもベストを尽くそう。」そう誓って、大好きなことをするために自分で人生を決めた。そのことは、どこまでいっても素晴らしいことではないか。少しの停滞で大好きなことをあきらめてよいのだろうか。いや、たとえ大きく挫折したとしても、大好きなことのために立ち止まらずに歩くことが重要ではなかろうか。
試合が終わった背番号15は力を使い切って一言も発せないようだった。だが、その背中からは熱いスピリットがたしかに伝わってきたのだった。
(wrote:財団法人 住吉病院)