多職種チームと超職種チーム
- 2008.05.26
- 日記
デイケア連絡会のグループ討論で「多職種チーム」と「超職種チーム」についてお話ししましたので、ここで補足しておくことにしました。
最近のメンタルヘルスサービスの提供チームのスタッフは、看護師、PSW、CP、OTR、就労支援スペシャリスト、当事者スタッフ、精神科医、プログラムアシスタント(チームの中で臨床以外の事務的な仕事に携わる秘書のような存在)などの多職種により構成されます。統合失調症に薬物依存などdual diagnosis(重複診断)がある場合には、さらに薬物・アルコール依存の専門家がチームに加わるなど、事情によりスタッフ構成も異なってきます。
各スタッフは、利用者に直接支援サービスを提供し、またアセスメントを行う場において、それぞれの専門領域の専門職能を生かしながら活動することを求められますが、一方で、それぞれの職種の領域は厳密に固定されたものではなく、むしろ職種を超えた立場で利用者にかかわるため、従来のmultidisciplinary team「多職種チーム」ではなく、transdisciplinary team「超職種チーム」と呼ばれているモデルが採用されます。
従来の「多職種チーム」は多くの専門家で構成されていますが、各職種の役割は固定化されています。
医師は患者を診察して処方箋を書き、臨床心理士は心理検査やカウンセリングを担当し、PSWは福祉面のサポートを行います。毎週のカンファレンスで統合的に機能するように情報を共有するとはいえ、おおむね各領域の仕事は分担され、流れ作業的に行われるます。
一方で、「超職種チーム」は、利用者のニーズの存在がまずあり、利用者から提起される問題に対して、日々のミーティングの中で各職種が専門性を越えた立場でアイデアを出し合い、それが利用者にフィードバックされて自己決定を促すことになる。つまり、利用者自身がチームの核になっていることで、複雑なニーズを持つ利用者に包括的・統合的なサービス提供が可能になるわけです。
「多職種チームモデル」と「超職種チームモデル」の差異は次のようになると思われます。
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多職種チーム
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超職種チーム |
アセスメント |
職域毎に分類
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同席かつ包括的 |
サービス利用者の参加 |
個々のスタッフとの面接 |
積極的に参加するチーム メンバーの一人 |
支援計画の作成 |
職域毎に分割 |
スタッフと利用者による 共同計画 |
支援計画の施行 |
支援計画中の職域に関連した部分を担当 |
計画施行とモニタリングにチームとして責任を持つ |
コミュニケーションの流れ |
非公式 |
規則的なチームミーティングの中で情報、知識、技術が共有される |
根底にある哲学 |
多職種の重要性を認識している |
統合された支援計画を実行するにあたり、あらゆる局面で職域を越えた仕事をする |
スタッフの成長 |
職域毎の独立性 |
職域を越えて機能する統合的要素としてのチームの建設 |
出典:西尾雅明:脱施設化の理念とこれからの精神保健・医療・福祉機能分化の方向性。病院・地域精神医学45(4):375-381,2002
(wrote:財団法人 住吉病院)
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