Evidence-based Practice
- 2008.01.21
- 日記
精神障がいに対する心理社会的支援には数限りない方法論がありますが、アメリカではコストと効果の面から、システムとして有効性が実証されている、すなわちエビデンスのある支援法は6つあるとされています。その6つとは1998年のthe Robert Wood Johnson Conference in 1998 において以下のように定義されました。
1.包括的地域生活支援(Assertive community treatment:ACT)
2.援助つき雇用(Supported employment:SE)
3.病気の自己管理とリカバリー(Illness management and recovery:IMR)
4.精神科における薬物治療管理アプローチ(Medication management approaches
in psychiatry:MedMAP)
5.家族心理教育(Family psychoeducation:FPE)
6.薬物依存と精神疾患治療の統合(Integrated dual disorders treatment:IDDT)
です。
当法人においては、1.は訪問看護指導が、2.はデイケアの就労前プログラム・生活支援センターのジョブコーチ・作業センターのトレーニングが、3.はデイケアやOTでの心理教育的アプローチが、4.は薬剤師による精神科薬剤管理指導と錐体外路症状のチェックによる処方計画への参画がかたちになりはじめています。5.についてはアルコール依存症・摂食障がいへの家族教室がありますし、個人的には病院での家族会活動に加えて、以前デイケアで行われていた家族教室の再開を検討しています。
6.のIDDTはわが国ではあまり研究成果が発表されていないものですが、依存症をお持ちの方に精神疾患の診断が重複する場合がかなり多いことがその必要性のベースにあります。アメリカにおいては依存症のセンター化された治療では、並存精神疾患をお持ちの方が排除されてしまうことが多いという現状が再発予防や治療的成果に有効でないことが指摘されており、重複診断をお持ちの方の場合には
?@1つのチームが
?A1つの場所で
?B同時にサービスを提供すること
が有効性についてエビデンスのある支援であることが確認され、また、依存症治療と精神疾患の治療を平行して行うことは有効でないとされています。
IDDTは以下のようなコンポーネントからなっています。
#註:リカバリーへの4つの段階
第1段階 希望
第2段階 エンパワメント
第3段階 自己責任
第4段階 生活の中の有意義な役割
(出典:ビレッジから学ぶリカバリーへの道~精神の病から立ち直ることを支援する。マークレーガン
著:前田ケイ監訳/金剛出版)
いずれも地域支援を中心に行われる包括的活動が重視されているもので、たとえばデイケアの形式で重複診断をもつ方への支援を行うことなどが考えられると思いました。
EBPの観点からのIDDTに関して詳しくはこちらのHPをご覧ください。↓
http://mentalhealth.samhsa.gov/cmhs/communitysupport/toolkits/cooccurring/default.asp
(wrote:財団法人 住吉病院)
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