統合失調症2

勉強会の統合失調症は第2回目になりました。

あいにくと山梨精神医学研究会の日と重なってしまいましたが、今回も多くのスタッフの方に集まっていただきました。統合失調症の基礎のおさらいをしてから、今回は少しトピックスを交えてお話しました。

    

1)DUP(Duration of Untreated Psychosis)

  最近、ときどき耳にするDUPは日本語では「精神病未治療期間」と訳されます。

  統合失調症の場合は「陽性症状が出現してから治療が開始されるまでの期間」になります。最近
  の研究では7ヶ月から2年くらい、治療に結びつくまでにかかるとされています。日本では、DUPは
  さらに長いとされています。

  Edwards J, McGorry PD”Implementing Early Intervention in Psychosis.”
Martin Dunitz, London, 2002.(日本語訳:精神疾患早期介入の実際。水野雅文・村上雅昭監訳、金剛出版)によれば、長いDUPは

 寛解までの遅れ、不完全寛解
 より不良な予後(精神症状の重症度より問題)
 心理的・社会的発達の障害
 
うつや自殺のリスク増加
 家族や社会からの支援の喪失
 不必要な入院
 自尊心の喪失
 コストの増大     などを引き起こすとされています。

 したがって、統合失調症の新規発症者に関しては、早期発見により包括的な早期介入が必要になるわけです。よく「統合失調症は、最初は薬で何とかなる」「確定診断の前に統合失調症の心理教育をすると、患者さんががっかりする」などという意見を耳にしますが、エビデンスの立場から言えば、早期介入に十分なコストを投入することで、統合失調症の方の予後は改善されます。デイケアや作業療法のプログラムにも心理教育的・包括的なプログラムが必要なのではないでしょうか。

2)Critical Peridod (臨界期)

 臨界期とは、初発の統合失調症をお持ちの方の治療経過において、当初の5年ほどをさしています。この時期には種々の症状が発展し、いわゆる「病気がすすむ」ように見えます。この時期は病気のなりやすさ、いわゆる脆弱性(ぜいじゃくせい)といわれる性質の高い時期と考えられています。臨界期の治療のよしあしが長年たったあとの障害の程度を強く予測するという事実があります。

病気の初期に十分な情報提供と治療・リハビリを提供する。これは、ほかの病気では当たり前に行われていることですし、精神科でもアルコール医療においては当然とされていることで、もちろん当法人ではずいぶん前から行われていることです。

今回も、当法人の伝統・アルコール医療が精神科医療の王道にあるということを確認することが出来ました。

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