統合失調症における認知機能2

10/29 統合失調症の認知機能のブログ

の続きです。

統合失調症の認知機能障害の中でも重要視されているのがワーキングメモリーの障害です。ワーキングメモリーは短期記憶・即時記憶・一次記憶などとも言われますが、その定義は次の通りです。

  • ワーキングメモリー(作動記憶)とは,ある目的のために一時的に保持された後に
    すぐに利用されるような情報についての記憶のことである.

ワーキングメモリーは単純に貯蔵された記憶というよりは、?@情報を必要な期間心にとどめ、その後に、?A長期に保存するための準備過程に送るか、忘却という過程で表面から消去するかという処理を行う、という2つの一連の過程全体のことを指す概念です。

他人からの指示を一時的に記憶して、そのうち大事なことだけ残しておく能力は、仕事をする上ではとても重要です。したがって、就労支援の場面ではワーキングメモリーを補うような行動指針(メモをとる、見えるところに行動すべき内容を貼る、その場で実際にやってみる、ボイスレコーダーを用いる、など)を利用することや、コンピューターなどを用いた認知リハビリテーションが重要になってきます。一方で、ワーキングメモリーに障害があると、頭の中にある情報の発生源の区別がつきにくくなります。そうなると、頭の中の音声的イメージが自分の考えなのか、外から聞こえた音なのかが区別もつきにくくなり、これが幻聴につながる可能性もでてくるわけです。

職業訓練と認知リハビリテーションについては、いくつかの研究があります。

  1. 職業訓練にPCによる数字順唱と言葉の配列訓練を行った群は行わない群より有意に順唱が改善し、それは訓練終了6ヵ月後にも維持されているという報告。
  2. 職業リハビリテーションのみを行ったユーザー群と、それに認知リハビリテーションを加えた群の比較では、5ヵ月後に認知リハ群が作動記憶・遂行機能・感情認知について改善がすぐれていたという報告。
  3. 職業リハビリテーション参加者の調査で、開始13週までの作業能力は開始時の注意機能が最も予測性が高かった。
  4. ジョブコーチが支援するクライエントにおいて、認知障害を克服する戦略を多く持っているジョブコーチのほうが、担当ケースの就職率が高くなる可能性がある。

などはよく知られたものですが、これ以外にも多くの論文があります。これからは認知機能に焦点を当てながら統合失調症のリハビリテーションを行っていくことが必要だと思います。勉強するには次の本がお勧めです。

 

統合失調症の認知機能ハンドブック―生活機能の改善のために
Philip D Harvey,Tonmoy Sharma著,/丹羽 真一、福田 正人翻訳:南江堂

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(wrote:財団法人 住吉病院