看護実習指導者の心得

公益財団法人住吉偕成会では、患者様ならびに利用者様のご協力のもと、医学生、コメディカルの学生、看護学生の皆様の臨床実習の場所として、精神保健福祉分野における専門職教育に貢献しております。この数年はCovid-19感染症禍で対面における実習が停滞しておりましたが、昨年春の新型コロナ感染症が「法」上で5類に移行して以来、感染症予防対策の上ではありますが、実習を再開してまいりました。

そのような中で、看護部でも多くの学生実習生を受けいれるようになりましたが、実習指導者のナースたちは、ポストコロナにおいての新たに対応について考えながら共に学んでいこうとしています。過日、急性治療病棟で実習指導の任にあるF看護師が、スタッフ向けに表題のプレゼンテーションを行ってくれましたので、医学生ならびに研修医の方々の指導を行っているスタッフの一人として私も参加いたしました。別件もあり、すべての時間を聴くことが出来なかったのですが、後日シェアしてもらったスライドが心に残りましたので、ご本人に了解を得たうえで一部ご紹介いたします。

プレゼン担当のF看護師の話によると
・”最近の若者は”と言われますが、生きる時勢による特徴はありますが、どの時代でも若者は
 青年期の発達課題を抱えていて、同じように未熟である。というだけじゃないか?
・最近の若者=青年期の発達課題を持つもの
・最近の若者も、昔の若者も変わらない。
・昔の40歳と今の40歳に大きな違いはあるのか?誰もがいずれは成長し、青年期に発達
 課題を乗り越えていく。そして誰もがいずれは年長者となり“最近の若者は”と言い始める。
 それもまた変わらないのではないか。
・人生は若いころには“今の若者は”といわれ、年を取ると“今の若者は”と言い始めるそう
 決まっているのか?

なんて思いました。ですが、今の若者はその輪廻を抜け出す初めての世代かもしれません。なぜなら、幼少から”多様性“を重んじる大切さを学んだ世代だからです。

ということでした。

そのうえで、そういった学生のことを“何を考えているかわからない・理解できない”と我々が感じるのは当然。我々が考えるより多くのことに学生は考えを巡らせている。我々は多くの経験から、いつの間にできるようになったり、理解するようになっているが、学生は実習という真新しい環境で多くのことを吸収する過程におり、そんな学生に我々ができることは良い吸収をたくさんできるように支援すること、という気づきがあったとのことであった。

F看護師によると、「学生に向き合う」ことを具体的な場面の中で取り入れ、

取り組みや努力を認める(称賛する)
 ⇒改善すべき点を投げかける
  ⇒状況と意思を確認し、受け止める(尊重する)
   ⇒指導者としての自己の考え方や見解を伝える
    ⇒学生と方向性を共有する

というやり方で指導を行っていこうというものでした。特に、実習の期間中に

・学生で考えて機会を与え、自分で問題解決できた満足感・喜びを味わせる
・学生の努力の成果を誉める。怠慢に対しては厳しさをもって接する
・挨拶を返す。学生の氏名による言葉かけ
・感謝・労いの言葉かけ
・受け持ち患者と関わる時間がとれるよう配慮する

という提案は、実習生との間のみではなく、すべての場面において目の前の人へのリスペクトを忘れない、真剣に向かい合う、という姿勢が表れているものと感じました。

「人を育てることは、自分の成長にもつながる」「学生指導する中で自身のこれまでの看護実践を見直す機会となり、新しい発見もできる」という、言葉にも大いに共感するものでした。

それとともに、明治・大正に活躍した医師であり政治家である後藤新平先生の名言を思い出しました。

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする。」 それとともに

「妄想するよりは活動せよ。」

私自身も、10数年にわたり日本精神科看護協会で認定看護師を目指す中堅+αの皆様に講義をさせていただいたり、短期間ではあるものの、山梨県立大学看護学部の学生の方々に精神医学の講義を行った経験がありますがことが、若いスタッフのプレゼンテーションからは学ぶことが多いと感じました。

 

 

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。