アニマル-アシステッド・セラピー(その6)

動物介在療法(Animal-Assisted Therapy:AAT)に関する勉強のシリーズ6になります。

Kirstie Broadfield:Can Animal-assisted Therapy Aid Recovery from Alcohol and Drug Addiction?A Brief Review of the Literature.
DOI:10.13140/RG.2.2.33414.60483

以下、斜め読みの訳です。正確な内容は上記リンクからご覧ください。

動物介在療法や馬介在療法の有効性に関する実証的な研究やエビデンスは不足しているが、無作為化比較試験のレビューでは、重症患者における心理的、生理的な有益な改善を実証されたとあります。研究者らは動物介在療法は、「ストレス、不安、退屈を軽減する可能性があり、また、心不全患者における肺高血圧症の軽減やシンケイホルモンの血中濃度の低下など、気分や生理的な指標を向上させる効果もある。ただ、動物介在療法の効果を称賛する論文は多いが、エビデンスは弱いため比較対照試験による十分に設計された厳密な研究が必要である。

いっぽうで、動物介在療法のデメリットとしては、「動物に関連した恐怖症やストレス」「動物を飼育する医療環境の安全性」「最も重要な衛生管理」などがあり、これらはすべて十分に検討し可能な限り対処しなければならず、中でも馬介在療法の欠点は、多くの資源を必要として高コストであることである。

AATとアディクションリカバリー
薬物やアルコールのリハビリテーションにおいて「早期脱落者は未治療の患者と同じ結果になると報告されている」ことから、治療からの脱落を回避することは良好な結果を得るために不可欠である。アルコールやその他の物質依存症からの回復のためのリハビリテーションセンターは、特にメンタルヘルス、ストレス緩和、アンガーマネジメント、などの治療に補助的に「治療同盟の強化と、治療におけるストレスを軽減する」療法も必要となる。
薬物依存やアルコール依存のセラピーセッションは、参加者にとって非常にストレスの多いものであり、セラピストとの絆を深めることが困難な場合も多い。しかし、動物介在療法の利用は治療同盟を築くための成功戦略であることが示されている。それは、クライアントが動物(主に犬)とセラピストの間の信頼関係を見ることによって、セラピストに対して安全で安心だと感じる可能性が高いことが挙げられている。 治療同盟の増加は、特に居住型リハビリテーションセンターにおいて、クライアントの治療プログラムに完全に関与する動機を高めるとされている。セラピーアニマルはセラピストを信頼し、クライアントはセラピストがセラピーアニマルと積極的に交流しているのを観察しているので、クライアントはセラピーアニマルが性格の良い予測因子であると感じ、もし動物がセラピストを信頼しているなら、クライアントもそうだと思うかもしれない。セラピーセッション内での動物の非審判的で受容的な態度は、クライアントの感情的機能の改善を助け、感情的ウェルビーイングの中程度の改善と関連している。 有名なリハビリセンターであるベティ・フォード・クリニックの元臨床部長であるNancy Waite-O’Brienは、特に依存症回復患者に対する馬介在療法を強く支持しており、彼女はその理由を「馬と議論できないから」だと主張している。

薬物使用障害治療施設における若年成人に対する馬術補助療法について、18ヶ月間の治療プログラムを追跡調査したKern-Godal, Arnevik, Walderhaugh and Ravndal (2015) による査読付き定量研究では、馬介在療法への参加と治療期間が長いこと、そして「(馬介在療法への)参加と治療完了の間に統計的に有意な関連がある」ことが判明している。 さらに、馬介在療法参加者が「非参加者に比べて、90日以上治療を継続し、治療を完了する可能性が有意に高いと、前述の動物介在療法の定着効果を裏付けている。

アルコール・物質依存症治療における馬術療法の利点は、ファシリテーターが主導する構造化されたグループセッションと、セッション中のクライアントの経験に対する絶え間ないフィードバックである。 物質乱用治療プログラムの入院患者を対象に、南アフリカのライオン・動物公園とはいえ動物介在療法を行った質的研究では、この療法によるポジティブな経験が実証された。これらの例は、動物介在療法が「様々な動物との同一化を通して、困難な思考、感情、動機、葛藤を明らかにし、話し合う」ために使用できることを示している。

結論として筆者らは、文献レビューにおいて、一般診療における動物介在療法の利点に関する既存の議論を調査し、特にアルコールと物質依存のリハビリテーションにおける議論を調査した結果、動物介在療法も馬介在療法の双方が、アルコール・薬物依存症治療を含む多くの場面で有益であることがわかった、とした。 一方で、動物介在療法に関連するコストや衛生面の問題、特に馬術療法のコストや資源の強度を慎重に検討する必要がある、とした。