アニマル-アシステッド・セラピー(その5)

動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)の認知症への適用については、コクランのシステマティック・レビューが出ていました。
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013243.pub2/full

これらをレヴューした著者の結論は次の通りです。
AAT が認知症患者の抑うつ症状をわずかに軽減する可能性があるという確実性の低いエビデンスが見つかりました。AATがこの集団の他の結果に影響を与えるというはっきりとしたセビデンスは見つかりませんでした。エビデンスの確実性は、結果に応じて非常に低いものから中程度の範囲です。安全性や動物への影響に関するエビンデンスは見つかりませんでした。したがって、認知症患者における AAT の全体的な利点とリスクについて、明確な結論を出すことはまだできません。エビデンスの確実性を改善するには、さらに適切に実施された RCT が必要です。そのような試験で参加者と職員の盲検化を達成することの難しさを考慮して、将来の RCT は結果評価者の盲検化に取り組み、割り当て方法を明確に文書化し、情動、感情的および社会的機能、生活の質などの患者にとって重要な主要な結果を含める必要があります。

2019年以降の研究を含んだメタ解析の論文も見かけました。

Chen H, Wang Y, et.al.:Effects of animal-assisted therapy on patients with dementia: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.Psychiatry Research(314), August 2022, 114619
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165178122002207?via%3Dihub

認知症を対象としたいくつかの研究では、動物介在療法(AAT)がうつ症状や日常生活動作の障害など、認知症に関連するいくつかの症状を緩和し、認知機能をわずかに改善するのに役立つというもの、システマティック レビューによりAAT が認知症の人の日常生活動作、抑うつ、興奮、生活の質、または認知障害に影響を及ぼさないというものがありました。
前述のLAIらのレヴュー(2019)ではAAT を受けた認知症患者は、受けなかった患者と比較して、AAT 介入の終了時にうつ症状のレベルが低いと結論付け、AAT による認知症の治療における有望な結果が記載されていますが、不十分なデータの結果として、認知機能に対する AAT の効果に関する結論は引き出されませんでした。また、認知症でない患者群もこれらの研究の 1 つに含まれていました。
Laiらの報告以降、いくつかの新しい RCT が登場しました (Briones et al., 2021; Parra et al., 2021; Quintavalla et al., 2021; Vegue Parra et al., 2021)。総じて、AAT に関するいくつかの研究結果は有望なものでしたが、明確な結論には達していませんでした。筆者らは認知症患者に対する AATに対して、これまでに完了したすべての RCT の系統的レビューとメタ分析を実施して認知症患者に対する AAT の効果を定量化することを目的としたメタ分析研究を行いました。。PubMed、Embase、および Cochrane ライブラリを 2021 年 11 月まで検索して、認知症患者に採用された AAT に関連する研究を収集したところ、825 人の参加者を含む 11 のランダム化比較試験 (RCT) が抽出されました。対照群と比較して、AATによる介入を行った群は認知症の行動的および心理的症状(BPSD)、特にうつ病の有意な減少を示しました. しかし、認知機能、日常生活動作、激越、または生活の質に有意な改善は見られませんでした。このメタ分析は、AAT が認知症患者の BPSD を効果的に減らすことができることを示している、と筆者らは結論しています。

 

 

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