フランスにおける抗認知症薬の扱い

https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/20180605-00086006/

2018年8月1日より、フランス厚生省(社会問題・健康省)は現在、アルツハイマー病の治療のために使われている薬ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン・メマンチンを医療保険のカバーから外す決定をしました。つまり、これらの薬を使用するためには全額自己負担となるわけです。

フランスにはHAS(haute autorite de sante:高等保健機構)という独立性を担保された公的機関があります。この機関は患者や利用者の方が可能な限り効果的で安全かつ効率的な医療に、公平かつ持続的にアクセスできるようにすることを重視しており、HAS はこれを実行するため、医療製品(医薬品・医療材料等)や医療技術(診療行為)、医療・公衆衛生分野の組織を科学的な立場から評価する役割を担っているとされています。

これまでの臨床試験では、これらの薬を適切なタイミングで使うことにより、認知機能の低下を一時的に抑えられる、ということが示されていますが、服用された方ご本人のQOLが高まったり、自立生活ができる期間の延長などの生活面での良い影響があるかどうかを検討した研究を再度検証した結果、2016年10月にHASは、アルツハイマー病に使用させている薬物について、現時点では改善の証拠は「不十分」であると判断し、かつ一方で、消化器系や循環器系などへの有害事象は無視できないとして、これらの薬を「医療保険でカバーするのは適切ではない」と勧告しています。

そのうえでフランスでは、薬に投入されていた公的資金をかかりつけ医の役割の強化や介護者の負担の軽減、アルツハイマー病を持つ方が急に病気になった場合などに対応する特別チームを設置するなど、薬物療法以外に向けるようです。

今回の決定はあくまでフランスで行われたものですので、日本の状況に適用できるかは不明です。リンク先でも「このニュースを受けて、いまアルツハイマー病の治療薬を服用中のかたが自己判断で中断することは絶対に避けてください。薬を使うべきかどうかは個別の状況によって判断されることで、一概に服用すべきかしないべきかを言うことはできません。」としています。

わが国で急速に増加している認知症ですが、その対策は、「薬でなんとかする」という考え方から、薬物療法は一つの手段であり、認知症を抱える人のいる環境全体にアプローチしていこうとする形に世界的には変わってきています。

今回の決定は、さすがユマニチュード発祥の国、フランスだと思いました。


精神看護17巻第3号、2014年5月、医学書院

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