Q&A@山梨県立大学看護学部の皆さまへ
- 2018.07.17
- 日記
昨年度から山梨県立大学看護学部の2年生に治療学各論IIの一部として精神医学に関して講義をさせていただいています。今年も8コマの講義でしたが、出席カードには講義内容に関する疑問・質問などをいただくことがあり、次の講義の際にできる範囲でお答えしてきました。都合で最終回でお答えできなかった質問にこの場を借りてお答えします。なお、あくまで個人的見解であることをお断わりしておきます。
Q1.親に対して反対意見を言えるためには?
A1.私が今勉強しているLEAP(Listen-Empathy-Agree-Partner)アプローチでは、
自分の意見を言う前にまず相手の言うことをしっかり聴くことから入っています。
反論は必要なく、相手の意見を詳しく尋ねてみます。「どうして?」という質問は
なるべくしないで、その意見をもったのが「いつ」「どこ」と訊いて見たりしてから
最後に自分の意見を述べる、相手の意見に反対ではなく「自分の意見を言い
たいけrど聞いてくれますか」などを利用してみてはどうでしょうか。
Q2.自閉症は先天性のイメージだが、後から現れることはあるのか?
A2.ASDについては、遺伝子の影響が強いと言われており、先天性の障がいである
可能性がとても高いと言われています。二次障害や成長してからASDの特性が
はっきりすることはありえますが、子育てなどの後天性のものはない、という説が
支持されています。
Q3.DSM5での運動症群とはどういうものか?
A3.DSM5の神経発達症のなかにある診断概念で、ASD・ADHD・知的能力障害群・
コミュニケーション症群・限局性学習症群・チック症群とならんで分類されており、
発達性協調運動症や常同運動症が含まれます。
Q4.自己肯定感はどうしたら身につくか?
A4.個人的に思うのは「ありがとう」「頑張ったね」「味方だよ」「大好き・愛してる」など
を声に出して言う、言ってもらう。などが心に浮かびます。結果によってほめたり
他人と比較して評価する「裁きの言葉」には気をつけたいです。
Q5.ASDの症状にあるパターン行動と構造化とはどう違うのか?
A5.ASDの人は予測ができない状況での不安が高いために、決まった行動パターン
にこだわったりすることが多いですが、構造化では、そのこだわりへの対応として
「いつ」「どこで」「何を」「どこまで」「どれくらい」と言ったような、細かい部分までを
提示します。これらが構造化と言われる方法です。流れの要素を細かく分解して
理解し、そして一連の流れを把握することで作業に見通しを持たせる事に有効だ
と言われています。
Q6.ASDの人にとってどんな環境が生きていく上で必要なんですか?
A6.ASDの人には、その人それぞれの特性がありますので、一概にこの行動には
このように対処すれば絶対に大丈夫!という方法がある訳ではありません。
子どもが安心ためして、能力を伸ばしていけるような発達を支援をするには、
その子どもを十分に観察し、どのような特徴があるか理解しようとする姿勢が
必要と思います。
Q7.ADHDの人の数はどれくらいですか?
A7.ICD-10の多動性障害の有病率は成人で3.4%とされていますが、国によって
大きく異なることが知られています。近年有病率の増加が報告されており、診断
基準が一定でない可能性が指摘されています。
Q8.正義とは何のためにあるのか?
A8.NHK「白熱授業」で知られるハーバード大学のマイク・サンデル教授は、「正義に
ついて考える」として、正しいと考えられる「幸福の最大化」が、ともすれば一部
だけの幸福を追求して少数派を虐げる可能性、「自由の尊重」が暴走するとあら
ゆる欲望が正当化されてしまいかねないことを指摘しました。そこで、サンデル
教授は「美徳の促進」という3つ目の軸を導入して議論を多様化させることを提案
しています。そしてなにが正義かなにが悪か、すっきりした正解はないかもしれ
ませんが、実生活の中対話を続けて行くことこそが重要と考えているようです。
多様性を受け入れる現代社会は、たくさんの「正義」がある世界です。効率的な
答えが見えないなかで「正義とは何か」について対話していく必要がある、と私も
思います。
Q9.自閉症の人の強みを生かして本人が自信を持てることはあるか?
A9.自閉症スペクトラムに属しているかどうかに関わらず、人には誰でも強みや弱み
があります。強みと弱みは表裏一体であり、例えば、一人で黙々と仕事をするの
が苦にならず、ずっと一人で仕事が出来る強みを持った人がいたとします。反面、
その人は集団で仕事をすることが苦手という観点からは、その点は弱みとみな
されます。それぞれの人の特性を踏まえて強み・弱みを理解することで、力を発揮
しやすい環境や、必要な配慮を設定して、成功体験ができるように取り組んでいく
ことでモチベーションがあがると思います。
Q10.ASDの人は外見で分かるのですか?
A10.自閉症の診断には伝統的にウィングの3徴候というものがあります。?@対人関係
の適応に関する障害、?Aコミュニケーションの障害、?B興味関心の限定:反復・
常同行為が挙げられていますが、いずれもぱっと見ただけではわからないと
思います。
私の担当させていただいた学生の皆さま、毎回熱心に聴講いただき、ご質問もいただいてありがとうございました。期末試験でのご検討に期待しております。
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
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