長期入院されている方が地域に戻るために

今年に入ってからの報道では、厚生労働省は、統合失調症などで精神科病院に長期に在院されてる人々を2020年度末までに全国で最大39000人減らす目標を決めたそうです。日本の精神科入院患者数は国際的にも高水準で、しかも1年以上の長期入院の比率が極めて高いことは長年国際的に問題視されてきたところです。以前にも減らす目標が掲げられましたが達成できておらず、実現には財源の確保のほか、医療関係者の協力や地域の受け皿、住民の偏見の解消が必要になるといわれています。

今回は、行政による目標値を自治体がつくり、2018年度以降の障害福祉計画に反映させるとしています。精神的困難により精神科病院に入院し、施策の影響もあり長期に入院を余儀なくされた方々が、退院して社会で安心して暮らせる「地域包括ケアシステム」の構築を目指す、と厚生労働省はしています。

そのためには医療や福祉関係者らの連携をスムーズにすることなどが挙げられていますが、各国で行われてるピアサポートについての言及はあるものの、システムの中にピアサポートを取り入れていくことについてはあまり積極的でないような気がします。

現在長期入院の方を「地域に移行する」ことが関係者の間で論議されているのですが、ご本人たちの意向の聞き取りはされているのでしょうか。みなさんグループホームに入所して施設に通いたい、と思っているのでしょうか。はからずも知り合いの人々と一緒に過ごしたい方も、自分の故郷に戻りたい方も、新たな場所で捲土重来を期したい方もいらっしゃるのではないでしょうか。

就労支援はかつて、作業所や職業センターで訓練を受けた後に障がい者雇用で就職するという流れだけが示されていた時期がありました。今はご本人の目指すものや強みや興味を中心として、まず働く場を探し、その場で支援を提供するIPSモデルの援助付き雇用が知られるようになりました。そのことを思うとき、どうして生活の場の提供は支援の立場の人々の「あなたのために良いと思うこと」の通りでなくてはならないのでしょうか。働くことは治療の一部であるという考え方もありますが、働くことは社会での権利の行使であることも忘れてはならないと思います。そして、それ以上に、住むことは医療や福祉によるサポートの対象ではあるかもしれませんが、「自分の身をどこに置くかを自分で決める権利」ではないでしょうか。そのためのサポートは誰にしてもらうのかを選択する権利だってあるのではないかという意見もよくうかがいます。

厚生労働省では、以下のリンクにあるようなさまざまな方向性を打ち出していますが、これがすべてでもないかもしれません。これからの新しい医療福祉を超えた展開のために、私たちがどう進んでいくべきなのか、もう一度考えていきたいと思います。


参考:PDF 長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性(PDF:248KB)

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000051138.pdf

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。