第59回病院・地域精神医学総会

日本病院・地域精神医学会は、きたる2016年10月13日と14日に、練馬区文化センターで第59回総会を開催します。

総会ホームページはこちらをご覧ください→http://59-tokyonerima.sakura.ne.jp/

大会長よりの挨拶です。

第59回日本病院・地域精神医学会総会

「今、変えて行く勇気」

~病院を問い直し 地域を耕し 当事者と共に生きる社会を創ろう~

開催にあたって

「強制」から「共生」へ
精神医療の仕事に携わって面白かったこと、やりがいがあると感じたことはなんだろうか。私の場合は、いろいろな患者さんの人生に係わって、その人の生活、生い立ち、悩み、思い、それにまつわる人々の愛憎、世の中の動き、時代の流れなどを知ることが面白かった。自分が係わったことがその人の人生に少しでも役に立ったと思えれば嬉しかった。しかし患者の側から見れば精神医療に係わることは多くの場合楽しいことではない。自分の生活を根掘り葉掘り聞かれ、心の内側に踏み込まれ、自分の行動や考えを病気だと決めつけられ、突然生活の場から隔離されたり、身体を拘束されたり、注射され薬を飲まされたり、規則や指示を押しつけられる。患者さんには病気の苦しさから救われて回復した安心感よりも、医療から受けた屈辱感や敗北感が残りやすい。精神医療と患者さんとの間にある「強制」という深い溝をどのように埋め、乗り超えることができるだろうか。
昨年の多摩大会は「強制」から「協働」へのパラダイムシフトをテーマに掲げ、「今こそ強制する側、される側というパラダイムから、障害のある人、ない人が共通のゴールに向けて共に歩む関係、すなわち協働する関係にシフトすべきである」と宣言し多くの参加者の共感を得た。このテーマを今回の練馬大会にも引き継いでいきたい。
私が3つの精神科病院に合わせて15年間勤めた後にクリニックを開業して18年が経った。病院では強制され、あるいは不本意のまま入院した患者と向き合って診察することは苦しいことが多かったが、重い病気を治療しているという使命と責任も感じていたと思う。同じ入院治療でも精神病やパーソナリティ障害の強制入院よりも、患者の自発性と連帯を強調するアルコール治療の方がこちらの気持ちは楽だった。クリニックで診察すると、患者さんは私と同じ空の下で同じような街の中で、同じ店で買物し、同じニュースを見て、同じような悩みを持って年齢を重ねていると感じられ、町医者らしい気楽さがある。病気の軽い人が多いのはもちろんだが、重い精神病で話の通じにくい人でも、酒が止まらず悪態をつく依存症者でも、同じ街で共に生きている同士だと感じることができる。病院と違って、クリニックではこちらが入院や薬を強制する権限がない、対等に近い関係だからだと思う。同じ社会で共に生きているという連帯感を持つことは強制する・される関係を克服することと通じ合っている。
この学会では精神医療・保健福祉の従事者が病院や地域での自らの実践を見つめ直し、当事者と語り合い共に考えることができる。今われわれに求められているのは、現状を変えて行く勇気である。精神科病院のあり方と薬物療法の功罪を問い直し、地域を耕し人々の生きる権利を実現し、居場所を創り出して行こう。

2016年3月
第59回日本病院・地域精神医学会総会
練馬大会 大会長 金杉和夫(金杉クリニック)

ご自身の体験を作品で発表された漫画家・吾妻ひでお氏の協力によるポスターはこちらから
ダウンロードすることができます。(リンクをクリックしてください)

http://59-tokyonerima.sakura.ne.jp/www/wp-content/uploads/2016/06/8db23cfa5fdbc62ea1adada11b7b321b.pdf

私が所属する「情報委員会」では、2009年以来「精神科薬物療法」に関するセミナーを連続開催しており、ながく多剤大量療法の是正のための取り組みを続けてきました。今回も以下のセミナーを開催いたします。

薬剤師セミナー 
2016年10月14日 13:30~15:30 ※薬剤師以外の方も参加できます

座長:中谷 真樹(住吉病院 精神科医)
座長:吉尾 隆(東邦大学薬学部医療薬学教育センター 薬剤師)

「精神科薬物治療における剤数制限と薬剤師の役割」

平成28年度の診療報酬改定では、これまで、4剤以上とされてきた、抗精神病薬、抗うつ薬

についても3剤以上に制限が強化された。さらに、薬剤を減量すれば診療報酬がつくことも追加

された。この様な状況において、薬剤師、医師は薬物治療の適正化をより進展させる必要があ

るが、ユーザーの視点は最も重要である。そこで、今回はユーザーを交えて、精神科薬物治療

における剤数制限と薬剤師の役割について検討したいと考えている。

シンポジスト: 小林 和人(医療法人社団山容会理事長・山容病院 院長)

シンポジスト: 福島 泰輔(公益財団法人 西熊谷病院 薬剤師)

シンポジスト: 山口 弘美(NPO 法人エスペランサ 当事者)

当学会は、総会参加費はご本人・ご家族・学生の方は当日参加費を2000円としてご興味のある方のご参加に配慮しております。ほかにも多くのシンポジウムや研究発表がありますので、皆様どうぞご参加ください。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。