アルコール健康障害対策基本法成立

 不適切な飲酒が引き起こす社会問題の防止策や患者支援を国に義務づける「アルコール健康障害対策基本法」が12月7日未明、参院本会議で全会一致で可決、成立されました。この法律では公共団体にアルコール健康障害対策を策定・実施する責務があると明記されています。

 アルコール飲料の伝統と文化は生活に潤いを与え、生活に深く浸透している一方で、不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、本人・家族・社会に大きな影響を生じています。

 日本では何らかのアルコール関連問題を有する人は654万人、飲酒の強要・酩酊してのセクハラや暴力の被害者は3000万人を超えると、厚生労働省の「飲んだくれで意志が弱く、人間性が悪い」などという酒害で苦しんでいる人への偏見の解消や、単なる「多量飲酒」とみなされてしまいがちな人々への酒害問題啓発を通じ、治療の必要な人への適切な治療の提供を通じて、飲酒運転による悲惨なできごとや、飲酒に絡む自殺や暴力、虐待の低減を目指そうとしています。

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 タバコに関する健康上の問題は現在、広く共有されていますが、2010年のWHO総会では「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が全会一致で採択されています。この戦略では、広告規制や安売り/飲み放題の禁止や制限、課税などによる種類の価格引き上げなどを含む、幅広い対策が求められています。「タバコ規制枠組み条約」と違い、WHO加盟国への法的拘束力は持ちませんが、世界ではすでに酒害啓発・予防、酒害の被害者への積極的な支援の取り組みが進んでいます。

不適切な飲酒とは以下の3つのタイプです

 1)過剰な習慣飲酒
   厚生労働省の「第二次健康日本21」では男性で1日あたり日本酒換算2合・女性で1合以下
   の飲酒を数値目標に掲げています。
 2)ビンジ・ドリンキング
   たまの飲酒であっても、飲酒時の強い酩酊で急性アルコール中毒・事故・性犯罪・暴力が増加
   するため、1回あたりの飲酒量を減じる方策が世界各国でとられています。
 3)飲んではいけない条件下での飲酒
   妊婦・未成年者・ハンドルキーパー・機械の操作下では飲酒は禁止されるべきです

 公益財団法人である私どもは、アルコール依存症を持つ方々の治療を長年推進してまいりましたが、今回の法成立により、これからこの問題にかかわる「すべての人」への支援を意識してまいりたいと思っております。

※詳しくお知りになりたい方は「アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク(アル法ネット)」
  のホームページをご参照ください→http://alhonet.jp/


最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。