公開講座@慶應義塾大学医学部

慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の主催される公開講座で私と同僚の2人でお話をさせていただきました。

  

大学病院では、統合失調症をお持ちの方の職業リハビリテーションについて触れる機会はあまり多くないと考えておりますので、IPS(Individual Placement and Support)援助付き雇用がアメリカでエビデンスに基づく実践(EBP)として考えられている経緯、そしてIPSのプリンシパル、私の桜ヶ丘記念病院と住吉偕成会での経験などをお話しいたしました。

  

同僚は、自分自身の精神的困難の経験と、弊法人の面接のときにその経験を開きながら就職したこと、就職後に働いてみた精神保健福祉サービス提供の実際に対する自身の考えなどについて、「経験を力に変える」というテーマで発表しました。私は同僚とは日頃、デイケアやアウトリーチ事業で一緒に働く機会もあるのですが、その人自身の言葉として表された想いには、あらためて深く感じ入ることが多いと思いました。

会の終了後に専修医の先生方からもご質問をいただいたり、やさしいご感想をいただいたりして、良い時間を過ごすことができました。いただいたご感想の一部をご紹介いたします。

・精神科医として働き始めてまだ日が浅いですが、担当している患者さんの仕事についてあまり具体的に考えたことがありませんでした。先生のお話を拝聴しまして、患者の具体的な就職という視点を持てたことを今後自分の診療に反映できればと思います。また、先生の病院のフットサルチームの活動のお話を伺えたことは、私自身もすごく勇気づけられたように思います。
・自分も今までは社会復帰に向けてデイケア、作業所を勧めてましたが、これからはもっと普通に就活してもらおうかと思います。
・中谷先生のサッカーへの愛情がよく伝わりました。いままで精神障害と就労はあまり考えていなかったのでとても新鮮で、かつ住吉病院が特別な取り組みをされているのがよくわかりました。今後は厚生省の取り組みで長期入院を減らしていく方向となると思いますので、就労支援は二手も三手も先を行かれる取り組みだと思います。大変勉強になりました。
・主治医として精神疾患を抱えた患者さんから復職の希望が出た場合、どうしても疾患の悪化を懸念してしまい、慎重になってしまっていますが中谷先生のお話を伺って、『働いて元気になる』ということの素晴らしさを感じました。働くことは人が社会と繋がっている、と実感出来、尊厳を保てることにも繋がると思うのでこれからは今までより少しづつでも働くことを応援できればと思います。
・IPSについて勉強になりました。“ひとりひとりの就職選び”がおもしろかったです。
・勉強になったのはもちろんのこと、先生の情熱に触れ、非常に感銘を受けました。小川さんのお話にも心を動かされました。
・医療者としてはどうしても保守的になりがちで、患者が、特に統合失調症の方が就労に向かうとどうしても不安になります。私はIPSの論文を抄読会で読んだのですが、それでも就労に対しては消極的となってしまっています。先生が実際に診ていらっしゃる患者さんの話を写真、具体的なエピソードとして伺うことができて、IPSの有効性は確かにあるのだな、と感じることができました。それと同時に、リスクマネージメントの重要性も感じました。患者本人の病状悪化、就労することによって周囲に与える影響を考え、いかにうまく就労を続けるかが難しいのではないか、と感じました。
・是非、患者さんの笑顔を広げるべく、頑張って活動をしてください。ご活躍を祈念しております。

慶應義塾大学精神・神経科学教室の先生方、大変お世話になりまして誠にありがとうございました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。