ユーザーデモクラシー

デンマークにはブルーア・デモクラティ(BRUGERDEMOKRATI)と呼ばれるポリシーがあります。

ブルーア・デモクラティは、直訳すれば利用者民主主義です。教育、保育、福祉、まちづくりなどの政策決定や実施する過程に、そのサービスの利用(予定)者が直接参画することによって、より効率的かち質の高いサービス提供をはかるデンマーク生まれの行革のやり方です。
英語で発音するとユーザー・デモクラシーというこの言葉は難しい専門用語のようにも思えますが、その意味するところはとてもシンプルだと思います。
デンマークでこのユーザー・デモクラシーの概念が初めて政策に取り入れられたのは1983年の近代化プログラムの発表後であり、保守連立政権誕生を受けてからだそうです。公共支出の抑制を求められながらも、単に規制緩和や効率化を推進するのではなく、デンマークではユーザー・デモクラシーを法制化し、市民参加を推し進めることによって地方ごとにみあったモデルを構築してきました。
たとえば高齢者へのかかわりではボランティアが毎朝電話をかけて安否の確認などをする「安心コール」、週に1回話し相手をしに訪れる「訪問の友」、パーティの企画をするグループ活動などの様々な相互扶助的な活動をしています。もともとは「孤独な高齢者を守る会」が前身だったそうですが、孤立は多くの人々にとり元気を奪う状況であり、それを解消するための方策がユーザーの意見によって改良を重ねられ、発展してきています。メンタルヘルスの分野でも同様の手法が必要な気がしています。

制度的には、自立支援法にある個人の自立を促すかかわり、そして個人の意思を尊重する社会の仕組みは重要だと思いますが、家庭の問題や慢性的な病い、高齢化による問題を抱える人など、支援なしで強くあることが難しい人々が追いやられないシステムを作ることは重要だろうと思います。大切なのは「ある人のことを、その人抜きに決めない」ことや、「人は誰でも、適切な支援を受けることができれば、自分自身の問題を自分で解決することができる」という基本的な考えをとっていくことのように思いました。

朝野 賢司・西 英子・福島 容子著:デンマークのユーザー・デモクラシー―福祉・環境・まちづくりからみる地方分権社会。新評論社、2005

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