無敵艦隊、欧州を制す

ヨーロッパにおけるサッカーの国別カップ戦、EURO2008は、スペイン代表が久方ぶりの優勝をとげました。スペイン代表はかねてより、母国の栄光を示す「無敵艦隊」の称号を持つチームで、ワールドカップではベスト8以上5回、うちベスト4が2回、欧州選手権でもこれまで優勝1回、準優勝1回、ベスト8が4回という戦績を誇っていました。

しかし、最近は大きな大会ではベスト8どまりのことも多く、華麗なパスサッカーは見るものを魅了するものの、ここ一番の勝負には弱い、というのがここしばらくの「無敵艦隊評」でした。

しかし、今回のスペイン代表は違いました。老監督アラゴネスが最後の大会として現実路線を貫き、「スペインの至宝」と呼ばれていたFWラウルをはずし、華麗なパスをまわすサッカーから、カウンターもできる「リアクションサッカー」にチームを変えました。安易にDFラインを上げずにチーム全員で守備を行い、中盤でもシャビ、イニエスタ、セスクなど守備面でも力のあるメンバーをスタメンで使うようになりました。フォア・ザ・チームを前面に押し出しての挑戦でした。

もちろん、「つまらないサッカー」という国内外の不評もありましたが、アラゴネスはがんとして自説を曲げませんでした。そして迎えたユーロ2008の決勝では、体格に勝るドイツ相手にパスを回して中盤を支配、フェルナンドトーレスのゴールを守りきってドイツ 0-1 スペインと快勝。点差以上の力量を見せました。スペイン代表は44年ぶりに「無敵艦隊」の称号にふさわしい力をみせつけてくれたのです。

もう一つ、今回、スペイン国中を団結させる出来事があったのです。2007年8月25日、将来のスペインをしょってたつといわれていた若き代表アントニ・プエルタはリーガの試合中に心臓発作で倒れ、スペイン中の祈りもむなしく28日に他界しました。彼は2006年に21歳の若さで代表デビューした逸材でした。この悲しみの中で、自由奔放で、団結力に欠けるとも考えられがちだったスペイン代表は一つになりました。

ユーロ2008決勝戦でドイツ代表を下し、優勝を決めた後のセレモニーで、プエルタと同じセビージャ出身のセルヒオ・ラモスがひとり代表ユニフォームを脱いでプエルタを追悼するTシャツを着て記念撮影しているところを見て目頭が熱くなりました。そう、サッカーのピッチの上では、「大切な人」が見ているのです。

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(wrote:財団法人 住吉病院