PTSD

 

ストレス関連障害のその2はPTSD(トラウマ後ストレス障害)と適応障害でした。

 

トラウマとは、次の2つを同時に満たす体験です。

1.実際にまたは危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を、1度または数度、または自分または
  他人の身体の保全に迫る危険を、その人が体験し、目撃し、または直面した。

2.その人の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。

想定としては、誰の目にも明らかな衝撃的体験であるということですが、伝統的に身体疾患によるもの以外は、明確な原因提示をしてこなかった精神医学の疾患分類では、トラウマ関連障害は、やや趣を異にしているといえます。ちなみに、トラウマが確認されていないものは「適応障害」に分類されます。

 

PTSDは大雑把にいうと、

1.トラウマに」起因して
2.再体験が生じ
3.回避や精神的麻痺があり
4.覚醒亢進を生じ
5.1ヶ月以上持続する

ものということになります。

 

戦争は古くから、戦地を経験した人に精神的な影響を及ぼすことが知られていましたが、アメリカではベトナム戦争以降の帰還兵における社会再参加の困難とメンタルヘルスでの障害が社会的問題となったことでPTSD概念が熟成されました。帰還兵と犯罪の被害者の方々の共通点が多く、「世の中にはトラウマがたくさんある」ということがようやく理解されるようになったわけです。わが国では、こういった状況は1995年1月の大震災とテロ事件以降起こってきたことです。

 

PTSDと分類されるような精神的苦痛は「トラウマ」を得なくとも出現することが知られていますが、それらの原因が社会的承認を得るかどうかでご本人の苦痛が異なっているわけではないと思います。一方で、診断名を得ることによる社会的な保障に差異があることも事実であり、かつまた1度の大きなトラウマと、慢性的長期的な被害の積み重ねによる影響など、状況性や社会性でご本人の苦痛を裁くようなことは、実際の裁判ではない臨床の場面ではできるだけしたくないように思います。もちろん、治療臨床の場でPTSDかどうかの冷徹で法的な判断が下せるわけではないことも明らかなことだと思います。 

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(wrote:財団法人 住吉病院